ほん 2
□宝箱
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今なら言える、いつまでもそう思い続けていた。夢を見ていた私は、幼すぎた。
いずれ、こうなるって分かっていた筈なのに。
他のことなんて気にならず、私は、私だけを見ていて、愛し続けた。周りには、私は、私を嫌いだのなんだの言っていたくせに。
「私は、空っぽだ」
真っ赤と真っ黒の間の色をしていた空に向かってそう小さく呟いた。
きっと、誰にも聞こえない、そんな声は私だけの秘密。
「ん?なんか言ったー?」
「ううん!寒いなーって」
「えー!まだまだ暑いよ!」
にこにこと笑っていれば、いつの間にかそれが癖になって。挙句の果てに、悩みがなさそうで羨ましいって言われる。
別にそれが悲しいわけじゃない。悔しいだけ。まるで、私は悩んではいけないって言われてるようで。
今すぐに笑うことをやめればいい。だけど私にはできない。
嫌われることをなによりも嫌っていた。嫌われるようにするか、嫌われないようにするか、私はどちらも選べなかった。いや、選ぼうともしない。
「じゃあねー!」
「うん、ばいばい」
明日がくるなんて、そんな保証はないくせに、人間の多くが一日一日を大事にしない理由なんて知る必要ない。ただ、そんなもんで片付けられる。
「全部、そんなもん。そんなもん」
口癖になって、とりあえず諦めようとした。面倒くさい。それなのに、誰よりも他を気にしていた。
「ああ、もう、面倒くさいなあ、もう」
ため息をこぼしつつ、私は独り言を呟いた。