ほん 2
□永遠
2ページ/3ページ
彼は顔を私に向け、片方う腕を上げると私の頬を撫でた。
「前川くんの嘘つき」
未だに手当をしつつ、彼にそう言うと顔を顰めた。そして手当をしている方の腕で私を押し倒した。
「ありさ、本気で言ってんの?」
先ほどとは違う、甘いテノールで私を名前で呼ぶのは怒っているとき。
思えば、何故彼と暮らすようになったのだろうか。近づいてくる前川くんの顔を見ながら、ぼんやりと考えた。
精神的にぼろぼろになっていた私は、小さな公園に逃げていた。
親からの虐待で人間不信になり、友だちも誰も信じられず、自傷行為に浸った。
誰も私がこんなに悩んでいるのも、傷ついているのも知らない。
でもそれは、私が悪いから仕方のないことだ。
死にたいわけじゃない。消えてしまいたいだけだ。そう思っていると、珍しく人が公園に入ってきた。
正直どうでもよかった。しかしあまりにも、美しすぎるその容姿に見とれてしまった。
180cmはあるであろう身長に、小さな顔は、モデルをやっているのだろうか。いや、そもそも同じ人間なのだろうか。
ぼうっと考えながら、彼を見ていたが、彼は私よ方へ歩き始めた。
そりゃ気分悪くなるよね、そう思って彼のことを見たり考えるのはやめようと思い、ブランコを漕ぐ。
「ねぇ」
低めの声なのに、よく通る声で私は彼に顔を向ける。やはり同じ人間とは思えないくらいの美しさを持っている。
彼の次の言葉を待っていると、色気のある唇がゆっくりと弧を描いた。
「君は可哀想だね」
「え…」
「虐待もされ、人間不信になっているのに、嫌われることの方が耐え切れないから、無理矢理笑顔をつくっているんでしょう?しかも、そんな自分のことを誰も知らない、こんなにも頑張っているのにン、悩んでいるのに、苦しんでいるのに」
淡々とした口調で、全てを言い当てられたことに気味悪いとは思った。しかし、私は彼に何かを期待した。
「でも、俺は知っているよ、全部」
彼はにっこりと微笑み、両腕を広げた。
「おいで、ありさ」
前川くんは私を一途に愛した。何時も私に愛を囁いた。慣れずに反発したこともあったが、それでも彼は愛をくれた。
高校に入る頃には、いつの間にか前川くんと暮らし始めた。ボロいアパートでも私は前川くんと一緒に居られることなら嬉しい。
「ここが誰にも邪魔されない、唯一の場所なんだけど、ボロいのはやっぱ嫌だよな」
「ううん、いいよ」
「んー…こっちのマンションでもいいけど…」
前川くんは高級マンションがたくさん載っているサイトを見せた。
私は首を横に振った。高級マンションなんて私には似合わないし、ボロくたってそこに前川くんが居てくれたら、それでいいのだ。
「前川くんがいてくれるなら、ここでいいの。…ううん、ここがいい」
「そっか。…そうだな、俺もありさと一緒なら何処でもいいよ」
前川くんは微笑み、私の頭を撫でた。そうして私を抱き寄せると、そう言った。