弱虫ペダル

□願いごと
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ー1年後 7月7日ー




「そんなこと、あった?」
「なんで忘れるッショ……」
「ごめんよ巻ちゃん!この東堂尽八、できないことはない!!頑張って思い出すぞ!!」
「頑張らなくていい。むしろ、忘れてていい」

あれから1年、大学生となった2人は同居することになった。
今日はお互い、大学の授業はない日であった。

「久々にロードしたくなってきたな。そうだ、巻ちゃん」
「ロードするってか。生憎、今日は午後から雨ッショ」
「なら午前中だけでもいいではないか」
「新しい服が欲しい」
「それなら、店までロードで行こうではないか!!」

と、尽八の無理矢理な誘いに乗ってしまった。

同居してから初めてわかったことがある。尽八は自分が考えていた以上に思ってくれていた。口下手である巻島裕介をアイツは全て知っている。そこに憧れ、惚れたのかもしれない……そう思うと急に顔が熱くなってきた。

「ペアルックの服……買いたいッショ」
「ぺ、ペアルック?!」
「何もそんなに驚くことないッショ……」
「いやいや、驚くよ!巻ちゃんの口からペアルックって言葉が出てくるとは思わなかった」

確かにそうかもしれない。
前に尽八からペアルックの服を買おうと言われたとき、拒否したのは紛れもなく自分だった。そんな自分がペアルックを買おうと言い出したのだから驚かないはずがない。

2人は駐輪場にあるロードに乗って少し雲がかった空の下を並んで走っていった。
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