短編集

□番外編1
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ヘルサレムズ・ロッドは今日も騒がしい。

遠くで悲鳴が聞こえ、爆音が聞こえる。
銃は硝煙を上げ、路地裏には誰かの死体が転がっている。


「今日も相変わらず騒がしいな。静かってものを知らないのか」
「仕方ありませんよ、主。ここはそういうところですから」


今、事務所へといつも通り出勤する最中だ。
ここ最近はこれといった事件もなく、平和でいいのだが、逆にこれは嵐の前の静けさとも取れるということに気づいたのは昨日。
私の勘では今日あたりに何か面倒な大事件が起こるだろう。


「主は杞憂がすぎますよ。今日だってきっと平和に終わります!」
「そうだと良いんだけどな」


照り付ける日差しがきつくならないうちにさっさと事務所へ行こう。

ヘルサレムズ・ロッドの今年の夏はフェムトが南国気分を味わいたいとかで連日猛暑が続いている。
全く、無意味なことをする男だといつも表板がここまでとは…。

休日とは真反対に位置する職業であるライブラにとっては迷惑極まりない行為だ。


事務所につき、扉を開ける。
すると…。


「あっちー!!」
「ちょ、ザップさんうるさいです」


地獄絵図が完成していた。

なぜかこういう時に限って冷房が壊れるという悲惨な事故。
暖房ならつくらしい。

ちなみにこれ(冷房の故障)を引き起こしたのはザップだということを知っているが面倒なので言わないでおく。


「おはよ。朝から大変だな」
「おはようございます…。暑くないんですか…」
「とくには…」


私はいつものスーツだ。

ここ数日でだいぶクールビズを採用してくる構成員が多くなったがこれ以上の服なんて持ち合わせていない。

わざわざ買いに行くのも面倒だし【百枚舌】(仮)で私の周りは常に冷却しているしで、全く暑くない。


「ばんとー。氷出してくださいよー」
「こんな時に能力使って、もしもという時どうするんだ」
「もしもなんて来ませんって。最近静かじゃないっすかぁ。ねぇ、ばんとー」
「少年。皿を取ってきてもらえるか」
「いいっすけど…。どうするんですか」
「あのうるさいのを黙らせる。ついでに少年の分も取っておいで」
「了解っす」


あんまりうるさいので対策を取ることにした。
それに…目に毒だ。

ザップはアロハシャツに短パン、サンダル、サングラスに麦藁帽というこれから海岸でも行くんですかと聞きたくなるような恰好をしている。
街中だったらチンピラですか、と聞かれそうだ。

それに汗もかいているので近寄りたくない。


「とってきましたよー」
「おお、ありがとう」


少年から皿を受け取り、能力を使う。


「『氷』『砕けろ』」


その単語二つを言うだけで氷が空気中から出現し、砕けかき氷となった。


「シロップはお好みで勝手にかけろ」
「おおー!! ありがとうございます!!」
「サンキュー! 一生この恩は忘れねぇ!!」
「絶対明日には忘れてるだろう」


副官が突っこんでいたがザップ達は気にも留めずかき氷を平らげていく。
頭がキーンってするぞ。
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