短編集

□悪女?
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僕が仕事でヘマをした。


慣れないから仕方ない、クラウスさんやスティーブンさんは笑ってくれたけど、あれは確実に僕の責任だ。

気を抜いていた。
終わったと思って気を抜いていた。

そこで、あの人のおかげで僕は無傷。
あの人は1週間生死の境をさまよって今も目を覚まさない。


僕の、せいで。




「ツェッドさん。ツェッドさんのせいじゃありません」
「そーだ、魚類。別にお前だから助けられたわけじゃねえ。陰毛頭とか、犬女とかまぁ、ありえねぇけど俺とかが同じ状況でも、アイツは助けた。うぬぼれんな」
「ザップさん! でも、ザップさんの言う通りですよ。ツェッドさんのせいじゃありません。あの時、みんな終わったと思ってたんですから」








堕落王フェムトが作り出した魔獣の最後の一体。

数が多く、メンバー全員が満身創痍で取り組み、全員が終わったと思った矢先、まだ息があったようで最後のあがきというのか一番近くに居たツェッドに襲い掛かった。


その攻撃をモロにくらったツェッドは死ぬ間際までいったのだが、リリーの能力により、無傷。
対してリリーのほうは回復を施した後、倒れ、現在病院で治療を受けている。



「クラウスさん達いわく、急激な能力の国司によるものだろうって言ってましたし。リリーさんなら大丈夫ですよ」
「あいつは簡単に死んだりしねぇからな。じゃなきゃ今頃ここに居ねえ」



ザップ、レオ、ツェッドはリリーの病室の前で待機している。
リリーが目覚めるのを待っているのだ。







Prrrr


「レオナルドです。……はい、わかりました。すぐ向かいます。ザップさん、またフェムトがやらかしたらしくてスティーブンさんが至急手を貸してほしいって」
「わかった、行くぞ陰毛頭」
「僕も行きます」
「お前はここに居ろ。あいつが目覚めたとき一人って知ったら泣くだろ」
「いや、泣かないだろ。でも、そうですね。ツェッドさんはここに居てください。僕たちだけで大丈夫ですから」
「ですが、…分かりました。お気をつけて」



駆けていく二人を見送った後10分もたたずに医師がリリーさんの部屋から出てきた。


「目が覚めましたよ。…ですが…」


医師が言葉を濁したのが気になったがそんなことを構いもせず病室に駆け込んだ。


「リリーさん!」
「あら、ツェッド。そんなに慌てて…、私はどれくらい寝てたのかしら」
「一週間です! 本当に…みんな心配してたんですから」
「アハハハ、それは後でお詫びをしなきゃね」
「いえ、詫びなければいけないのは僕のほうです。僕が気を抜いていなければ…」
「ツェッド、確かに貴方は気を抜いていたわ。でもね、それはみんな同じ。貴方が近くにいたから襲われただけよ。こんな言い方すると冷たく思えるかもしれないけれど、誰だって不意には弱いものよ。クラウスだって不意を突かれるとケガをするしね」


そう笑って微笑みかけてくれるあなたのやさしさにはいつも心から感謝してるんです。


「今度は気を抜きません。……皆さんを読んできます。きっともう騒動も終わっているでしょうし」
「待って、……ツェッドのことだし、あとで伝えても余計自分を責めるだけだと思うから先に伝えておくわ。くれぐれもみんなには内緒にしてね」


なんだか、嫌な予感がした。
どうしてそんな言い方をするんです。


「私ね……」


そこから先は聞きたくない。
でも、聞かなければならないような気がして覚悟を決めた。


「視力がなくなっちゃったみたい」


ここにきて医師が言葉を濁した理由が分かった。
普通の人間なら視力をなくしてここで生きていけるとは思えない。
ましてや戦闘なんか。


「あ、でも心配しないで。気配で誰とか位置とかはわかるから。でもちょくちょく動作が変になるかもしれないから手を貸してくれないかなって」
「それは…」
「共犯になりましょ? 私がおかしな動作をしたらごまかしてくれるだけでいいのよ?」


たまに見せる意地悪な笑み。

貴方はわかっていてそうしているのでしょうね。
僕が断らないのを知っていて頼んでいる。
とんだ悪女です。


「わかりました。仕方ないですね」
「頼んだわよ。これでずーっと一緒だからね。私を置いてどっかに行っちゃったりしたら承知しないわよ」
「わかってますよ…。……?」


なんだか今告白をされたような……。
いや、言い回しがそうなっただけで紐になりますって宣言されただけだ。
そう、告白なんかじゃない。


騒動が終わってお疲れであろう皆さんを呼びに病室を出た。
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