短編集

□彼らの物語を終わらせたくなくて、リセットボタンを押した
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そこは何処か遠くて近い場所。
広くもあり、狭くもある。

そんな矛盾さえも超越している場所で一人の黒い少女はつまらなさそうにつぶやいた。


「どいつもこいつも笑っちゃうくらい無駄なことに一生懸命になってるのね。呆れちゃうわ」


彼女は黒い空間で横になっていた。
否あるいは立っているのかもしれない。
その場所には縦も横も上も下もない。
ただ黒が続いているだけなのだから。


そこで彼女は大きなため息を吐いた。


彼女が手を振ると水面のような鏡面のような〔窓〕ができる。


そこからはH・Lと呼ばれる場所が見えた。


異界と現世が交わる場所。


退屈しのぎに作ってみたが、それほど面白いことも起こらない。


「フェムトのは毎回いい線言ってるんだけどなぁ。それを解決するライブラのほうが断然面白いけど」


クスリと笑った彼女は手を一振りした。


するとそこには石でできた神殿が出来上がった。

さらにはライブラのメンバーの小さな布の人形もできた。

それを手に取り腕の中に閉じ込めた。

彼らは面白い。
だからこそ、死んでほしくなどない。
つまりは彼らにこそ不死者になってほしいんだが彼らはそんなこと望まないだろう。

だって、彼らが倒すべき敵こそが不死者なのだから、同じ属性なんて貰いたくないにきまっている。


「ふんふんふ〜ん、さて、どうやらピンチのようだ。どうしよう。どうしよう」


酷く楽しそうに端正な顔を歪めた少女はスキップしながら人形を上へ放り投げた。


そして、ふと立ち止まり〔窓〕を除いた。


「あーあー、終わっちゃったの? いやだなぁ。嫌だ嫌だ」


駄々をこねる子供の用に今度は不機嫌に顔を歪め首を振る少女。


「そうだ、リセットしよう。これは数ある未来の一つに過ぎないんだからきっとほかにも道はあるよ! そうだ! そうしよう!」


少女がパン! と手をたたくと〔窓〕に映し出された光景が一日前まで逆再生のように巻き戻った。

そう、巻き戻した。


「よし、再スタートだ。頑張ってくれよ、ライブラの面々!」



また、少女は〔窓〕を飽きもせずに見つめ続けた。
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