Novel

□Sailing day
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数分後。
船長とドクター、ナギが顔を出す。

「で。こいつらが侵入者か。ヌーディストアイランドの情報を持ってるそうだな」
船長が訊ねると、リーダーの男は口を開いた。

「ああ。俺達は遭難して偶然にもその島に辿り着いた。金は無かったから島の中には入れず働き手として雇ってもらい数日あの島で過ごした」
「お前達の船は?」
「本船はあそこだが、もう動かねえ。ここまでは船を一部バラして作ったイカダで来た」
男が指差した方角には岩間にシリウスよりも大きな船の影が確認できた。

「俺達は元々二十人ほどの海賊団だ。さっきアンタは動ける者だけ、と言ったが他にはもういない。次々と仲間を失い、生き残ったのはこの四人だけだ」
「遭難して長いのか?」
「最初の五日で元々少なかった食い物が底をつき、十五回太陽が沈んだ。気候の変化で体力も奪われる。死を待つだけだった。あんたらの船が通るまでは…」
ナギが目の前の四人にサンドイッチを出す。

「侵入者の俺達にメシを食わせてくれるのか?!」
リーダーらしき男が驚く。
「ま、海の上で困ったらお互い様っつーヤツだ」
船長がニカッと笑う。
こういう人タラシな部分が、かつてないほど有名な海賊王たる理由なのかもしれない。
男達は揃って船長に感謝の意を表し、ガッツいてメシを食う。
いつ食料が補給できるとも限らない。俺にとっては随分甘い、と感じるが。

「ヌーディストアイランドはどんな島だった?」
俺がたずねると、リーダーらしき男が顔をしかめた。
「俺達は中には入ってねえ。ゲートを眺めただけだ。入国には大金がいるからな。」
「やっぱりお金が要るんだね」
ドクターが改めて溜息をつく。

「ゲート以外から入国しようとするヤツらを見つけたらチクるのが俺達の仕事だった」
「報告?追い払うんじゃなくて?」
ドクターが追及する。
「ああ。スイッチのついた機械を渡され、不法入国者を見つけたらそれを押す。それだけで三食食事が出た。侵入者を掴まえるのは特別編成されたヤツラだけだ。まぁ、俺達も最初はそんんな島だって知らずに不法入国者として捕まったが、見張りをする契約をしたことで島の外周区域に住むことを許されたんだ」

「何故しばらくその島に居続けなかったんだ?島を出る準備も無いまま出てきたのかよ?」
俺が気になったことをハヤテが代わりに聞いた。
仕事の内容はともかく、準備もなく再び海へと出れば遭難することが目に見えていても、出ていかねばならない理由があったということだ。


男は大きく肩を落とし、首を振った。
「仲間が減ったのは遭難したからでも島から出たことで岩に捕まっちまったからでもねえ。…あの島で仲間の半数以上を失った」
ナギとハヤテ、ドクターと俺は顔を見合わせた。
船長だけが黙ったまま、リーダーの男をじっと見ている。


「俺達は高く囲まれた壁の外でうろついて居た。仕事中は見廻る範囲が決められていたし誰とも接触しない決まりだった。武器も全部没収されている。なのに、一日一日と仲間を次々失った。初めはメシに毒でも盛られたのかと思ったが、同じものを島の門番たちも皆食っている。訳もわからず死者が出る恐怖に、俺達はついに島から脱出してきた」

「…何かの流行病の可能性は?」
ドクターの質問に男はまた首を振る。

「いや。毎朝医者に診てもらっていた。俺達海賊団は身体が丈夫ってのが取り柄だったくらいだ。だから屈強な仲間が次々と命を落とすことが信じられなかった。しかも皆、自ら命を絶っちまう…昨日まで何とも無かった奴が変わり果てた姿で…」

「何だよ、その島。ヌーディストアイランドって気候も良くて食い物も豊富で美味くて、楽園みてーな島じゃねえのかよ…」
ハヤテが呟いた。
「島の中は金持ちだらけで、そうなんじゃねえのか?ゲートを行き来するやつらは皆楽しそうだったからな。」
男が震えるように言う。
「船長は偶然訪れたと言ってましたよね」
俺がたずねると、皆の視線が船長へと一斉に移る。

「ああ。そうだ。大金さえ積んで入っちまえば中は何でもし放題の楽園だ」
「…船長。本気でそこに行くんですか?」
珍しくナギが質問をした。
「ああ。行く」
船長がいつになく神妙な顔で言いきる。


『行かなければならない』
船長はそう言っていた。
噂で聞く楽園とは違った顔をみせる胡散臭い島に、一体何の用があるのか。

きらびやかなカジノに飽きた富裕層が娯楽として作り上げた裸の島―そこにはきっと、欲にまみれたお宝が世界中から集まってくる。
俄然興味が湧いてきた。

「俺達は全員島に入るつもりはねーんだが、待つ間船を停泊させる場所はあるか?」
男へと尋ねると、
「ああ。停泊だけなら可能だ。だが島へは上陸できない。上陸しているのは金を払ったヤツか雇われたヤツだけだ」

船長が顎髭を撫で考え込む。
「そうか。雇われるって手もあるな」
「は?」
ハヤテが聞き返すと、
「よしお前ら!島に入るのは俺一人とする!ハヤテとシンは雇われて潜入。ナギとソウシは船の見張りだ」

何で俺がやとわれなきゃならねーんだと言い返したくもなったが、先にハヤテが口を開いた。
「船長。何でよりによってシンとなんスか」
「それはこっちの台詞だ」

「お前ら結構いいコンビだしな」
珍しくナギが口を挟む。
「そうだね。船長一人で入国というのは心配だけど、彼らの話を聞く限り退路の確保も大事そうだしね」

「おいソウシ。俺一人で心配っつーのはどういうことだ」
「貴方に勝てる相手はまず居ないですが、貴方を誑かすには打って付けの物がその島には豊富にありそうですからね」
「ったく。信用されてねーなぁ」
「していますよ。だから何処へでもついていけるんです」
ドクターは微笑み、船長は笑う。

「あ、こいつらはどうしますか?」
ハヤテが侵入者を示すと、
「島まで案内させる」
船長の険しい表情に男たちは決意したかのように頷いた。


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