Novel

□エピローグ SHINside
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ガチャ

「あら失礼。子作りの最中だったのね」

シスターの声にガバッと身体を起こす。

乱れた衣服に●●の上気した頬。
床で縺れ合う二人。

「まだ、子作りなんてしてませんよ!」

「あら、さくっとやっちゃえばいいのに」

「…」

俺は心のなかで盛大に舌打ちした。

あっけに取られていた●●が、

「あわわわわわ」

ようやく状況を理解したのか衣服を整えた。

「●●さん。シンは子供の頃、それはそれは美少年だったのよ」

「え?」

突然始まった俺の過去の話に●●は興味深げに聞き返した。

「ただ三つまでオムツしてたけど」

「シスター!!」

(何を言い出すんだこの人は!)

「恥ずかしがることは無いわ。三つはちょっと遅めだったけど、皆が出来ればずっと天使のままでいて欲しいと甘やかしたからかもしれないわ。そうそう!あそこなんてぷるぷると可愛くって女の子みたいで…」

「シスター!!!」

「シンの頬っぺたがぷるぷるだったって話よ」

俺は殺意を覚えつつ、頭を抱えた。

「…一体なんの用なんです?」

「まぁまぁそう怒りなさんな。今夜あなたたちの為に村で婚約パーティ―することになったのよ」

「婚約パーティー?あの、まだ婚約とか…まだそんな…正式には…」

●●がもじもじと言う。

「さっきまでバッチリ子づくりしてたじゃないの」

「シスター。子づくりの話題はもういいですから」

「大事なことよ?私にとってシンの子供はマゴみたいなものですもの」

「どっちかというと年齢的に俺が孫だからひ孫だろ」

「何か言ったかしら?」

「いいえ」

「とにかく。皆張り切って用意するって言ってたから楽しみなさい」

「はい。有難うございます」

「じゃあごゆっくり。再開するなら鍵かけなさいね」

パタン、とまたドアは閉じられた。





「あはは…ほんとに嵐みたいな人ですね…」

●●が呆然と言う。

「ったく。邪魔ばかり入るな」

「ふふっ」

「何がおかしい?」

「ファジーさんを思い出しちゃって」

「確かにタイプは似てるかもな。まだファジーの方が扱いやすいが」

「クールなシンさんも形無しですね!」

「ほう…そんな生意気な口を聞いていいのか?」

「え?…っ!ぎゃあ!」

「お前がココが弱い事は分かっている」

服の裾から手を突っ込み脇腹を撫でると、●●は慌てて身を捩じらせる。

「わ、だめっ!く、くすぐったっ…!!」

「調子に乗ったバツだ」

「うわぁっ!だ、ダメっ!ダメですそれはっ!ぎゃああ!」

「ここだろ?」

「ちょっ!なんでそんな楽しそうなんですかぁあああ!む、むりっ!ダメ…ひィ〜!」

バタバタと暴れる●●の手が俺の首筋に当たる。

「っ…」

「ふぇっ?し、シンさん?」

「ったく。これに懲りたら…」

「今ビクッてしませんでした?」

「してねー。俺がするわけないだろ」

「ウソ。絶対ビクッてしましたよ?私がココを撫でたら…」

「駄目だ。触るな」

「ズルい!シンさんばっかりくすぐるなんて!私にもくすぐらせてください!」

「却下だ。いいか、くすぐったさと言うのは予想できない動きが与えられる事への脳の防衛反応なんだ。俺にお前の動きが予想できないなんて無い。よって俺はくすぐったいなどと思わない」

「なら触らせてください」

「変態か?」

「なんでそうなるんですか!ちょっと首筋触るだけじゃないですか」

「調子にのるな」

「シンさん」

甘い雰囲気は何処へやら。
バチバチと互いの視線をぶつけ合う。が、突然●●が窓の外を指差した。

「あ!シスター!」

「フン…そんな単純な手に引っ掛かるか」

再びマウントを取るべく●●の脇腹に手を伸ばす。

「私だってやられてばかりじゃないですよっ!」

●●がサッと避けて俺に手を伸ばしてくる。

「俺にかなうと思ってるのか?」

「痛ッ…シンさん…痛いです」

「っ、おい、どこがだ?」

慌てて掴んだ手を離すと、

「隙ありっ!」

「チッ、小癪な真似を…」

「わぁ!渾身の作戦だったのに、何でそんなに防御早いんですか〜!」

「お前の攻撃なんて寝ていても避けられる」

「うぅ…悔しい〜!」

「悔しかったら今度は色仕掛けでもしてみるんだな」

「そんな高度な手が使える訳ないじゃないですか…無茶です!」

「そうか?一番有効だと思うが」

「え?」

「お前にもな」

顔を近づけると、●●はビクッと反応する。

「ほら。やってみろ」

「絶対からかって楽しんでますよね…」

「当然だろ」

再びもつれ合いそうになった所で、ガタッと外から窓が開いた。

俺と●●が揃って視線をやると、シスターが顔を覗かせていた。

「あら、またお邪魔だったのかしら。ごめんなさい。窓も鍵を掛けないとダメよ」

「シスター…」

「怒らないでシン。パーティの会場と時間を伝え忘れたのよ。すぐ退散するからどうぞ続きをなさい」

シスターは会場と時間を告げてまた窓をガタガタと閉めてから立ち去って行った。

ぷっ、とどちらからともなく、笑いが零れる。


「ったく。ホントに邪魔ばかり入るな」

「ははは…緊張解けちゃった」

●●が屈託ない笑顔を浮かべて、ただそれだけのことが、胸の奥を温める。

母の故郷で、この場所で、こんなに幸せな気持ちを持てるようになるとは、母を失った時には思いもしなかった。

「ん?シンさん?どうしたんですか?」

少し首を傾げた●●の頬を、確かめるように指先で触れる。

「お前が居て良かった」

そう告げると、頬に軽くキスをする。

●●は身体を寄せた俺をギュッと抱き締め、そっと髪を撫でた。

「うん。私も。シンさんと居れて嬉しい」

「馬鹿…」

「くすぐりっこは休戦ですね」

「だな…」

傾き始めた陽が二つの影を重ならせ、

夜闇の訪れを迎えるべく長く伸びてゆくのを楽しみながら、俺達は互いの温もりを確かめ合った。


















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