Novel

□curse呪いの街
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「●●!」
ドアが勢いよく開き、みんなが駆け込んできた。
ナギが真っ先に倒れている彼女へと駆け寄った。
「●●!おいっ、大丈夫か?!」
麻酔銃を撃った緊張と衝撃から、彼女は気を失っていた。

「心配ない、気を失ってるだけだ。」
俺が声をあげるとドクターが目を丸くする。
「…えっ?まさか、シンなのか??」
「し、シンさんなんですかっ!?黒猫がしゃべってる?!」
後ろにいたトワが驚いた声をあげた。

「だからシンはネコになっちまってるってオレが言っただろ?トワなんて全く信じてねーし」
「いや、僕はてっきりこの寒さでハヤテさんがどうにかしちゃったのかと」
「はぁ?!どうにかってどーゆーことだよっ!?」

「ヒーッヒッヒッ!ムッツリ眼帯野郎、ブザマに撃たれたのか?そんな肉球じゃ銃も撃てないクセに真珠ちゃんを独り占めするからだっ」
ロイがおそるおそる部屋へと入ってきて、俺を見るなり、指差した。
「フン。うるせー変態。撃たせてやったんだ。」
銃口が向けられていたのはわかっていた。
だが彼女を解放することが優先だ。
ネコの姿じゃ代償は大きいが、あの男の意識がこっちに向くよう足を撃たせてやった――それだけのことだ。

「シン、その身体じゃ出血が命とりだ。あとは私たちにまかせて」
ドクターが俺の足を止血しながら、男と対峙した。
「町からさらわれた女の人たちの居場所を探すのに苦労しちゃって遅くなりましたけど無事、全員逃がせましたからっ!」
トワも木刀を構える。
「わけわかんねーモン撃ち込まれてイラついていたところだ」
ナギも鎖鎌を手にした。

やはりコイツらのことだ。
麻酔を撃たれて捕まったと聞いていたが――
心配するまでもなかったな

「まぁ待てお前ら。その男は俺に用があるらしいからな」
一番後ろから、船長がゆっくりと部屋へ足を踏み入れた。
「俺は残念でしょうがねえぞっ!キレ―なネーちゃん達レプリカだったとはなぁ。モテねえ男は人形遊びが好きなのか?俺は例えビンタくらったって生身の女が良い!」
「…お前は何もわかっていない」
男は船長の姿を見た途端、構えていた銃を降ろした。

「あの女たちはマリアが目覚めた時の為に用意していた道具にすぎない」
道具…?どういうことだ?

ふと、船長の視線がベッドで眠る女へと注がれる。
「…!!マリア!マリアじゃねえか!」
「うわぁ〜。綺麗な女の人ですね。船長の知り合いですか?」
トワの質問にハヤテが応えた。
「船長がそいつに手を出したから旦那だっつーこの男が怒ってるらしいぜ。」
「えっ!それじゃあ船長が悪いじゃないですか!」
「…ハヤテ、トワ。俺は手をだしてなんかねえぞ!」

「……」
「おいおいナギ。何だその視線は!お前まで疑ってんのか?そりゃ俺は存在するだけで女を虜にしちまうが、身持ちの固い女に無理やり手を出すシュミはねえぞ」
「船長。謝っても許してもらえそうにないんですか?」
「待てよソウシ!お前も俺を信じてねえのか?!…ちっ、●●!お前は信じてくれるよな?…ってお前ら、揃いもそろって黙り込むんじゃねえよ」

「…リュウガ。お前は海賊をやめるつもりはないのか?」
男が苦しげな顔で船長を見た。
その瞳に戦意は既に無く、悲しげな色を浮かべている。

…ただ女を取られた復讐、というわけではないのか?

「海賊なんて所詮犯罪者だ。自由を求めるなんて綺麗ごとをいっても、待っているのは結局地獄…」
「何だと?!てめーに何がわか…!」
ハヤテが掴みかかりそうになるのを、船長が止める。

「お前が俺をどう思おうと知ったことじゃねーが、狭いモノサシで海賊を語っては欲しくねえな。海賊をやめる?そりゃ生きてることをやめろってのと同じだな」
「そうか…やはり貴様の答えはそうなるのか」

男はベッドの脇にあるラベンダーの花瓶に手をかけた。
「ならば試してみるがいい。貴様らの信じるものを」

ゴゴゴゴ…

壁が回転し、大きな鏡が現れる。

これはまさか…


パァッと光が差し、身体が軽々と宙に浮きあがる。
周りを見ると時間が止まったように全員ピクリとも動いていない。
抵抗する間もなく、鏡の中へと俺達は吸いこまれていった――


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