Novel

□curse呪いの街
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廊下を駆け出すと、すぐに騒がしくなる。
ロイが牢を壊せばいいと思ったが、爆発音はさすがに感づかれたか…。

外にいた屈強な兵士たちと違って、若く綺麗な女たちが武器を構えて追いかけてくる。
城の中には女しか置いてないようだな…。
どれも村の女たちなのか、格好は武装しておらず普通の町娘だ。
だからこそ余計に手を出しにくい。

成程――船長達はこいつらに手をだせずに捕まったのか。

「すげー数が追いかけてくるぞ。おい、ロイ!何か持ってねえのかよ」
「ちょっと待て。ルルにもらった魔法の粉が…赤と黄色と青があるぞ!確か追いかけてくる敵にふりかける粉だと言っていたな」
「魔法の粉?チッ、かなり怪しいが使わないよりはマシか…使ってみろ」
「よし!後方へふりかけるぞ!」

ロイが女たち目掛けて青い粉をぶちまける。
ぼわん、と音が鳴り、先頭を走っていた女の身体はみるみるうちに膨れ上がった。
「膨らし粉みてーだな。これで少し動きは鈍くなるだろ。他の色はどんな効果があるんだ?」
「じゃあ次は黄色を…」
再びロイが掴みかかってくる女に粉をまく。
同じ音がして、二番目を走っていた女の身体が膨れ上がる。

「…同じじゃねーかよ!!」
ハヤテが突っ込むのを横目にロイがさらに赤色の粉を振りかけるが、結果は同じだった。
相手が膨らむだけだ。

「なになに?手紙がついているぞ。『色は違うけど効果は同じなんです。カラフルな方が可愛いと思って色を変えてみました。膨らます魔法だけは得意なんです』か。ふむふむ、ルルは膨らます魔法はカンペキだな!」
「感心してる場合か。チッ、結局膨らまし粉しかねーのか」

ルルが魔女のなかで落ちこぼれだという意味が充分に理解できた。
あの丸薬が出来た奇跡を喜ぶしかねーのか…。

膨らんだヤツは動きが鈍くなるが力は増すようで、繰り出す拳がぶぅんと大きな音を立てて風を切る。
「つーかコイツら強くなってんじゃね?男みてーな力になってるぞ」
ハヤテが避けた女の拳は壁へとめり込んだ。

しかも膨らんだヤツを押しのけて、追手は次々と虚ろな瞳のまま迫ってくる。
「くそッ、女相手じゃ殴れもしねーし!何とかならねーのか…」
ハヤテが女たちの振りかざす拳や剣をかわしながら叫ぶ。

「くっそぅ!この手は使いたくなかったが…秘技っ!」
ロイがすかさず走ってくる女に足をかけた。
女が数人もつれ合って派手に転び、落とした剣をロイが拾う。

「何が秘技だ。相変わらずセコイ真似だけは得意だな」
「うるせーっ!ラクして勝つ!それがオレのモットー!」
「ハヤテ。そいつらの剣を取って戦え」
「ンなこと言っても相手は…」
ハヤテは剣を握るが、女相手だと思うとどうしても鈍るらしい。

「心配するな。コイツらは人間じゃない。レプリカだ」
操られているだけかとも思ったが、身体の膨らみ方といい武器を振りかざす動きといい――生身の人間にしては不自然だ。
組織化されて決められたような動き。
ロイが足をかけて転ばせるまで確証は無かったが…

「レプリカ?」
ロイが首をかしげる。
「人形だ。転ばせた女を見てみろ。粘土でできている」
「粘土?!げっ、マジかよ」
ハヤテが女を凝視した。
転んで傷がついた足からはどろどろと粘土が崩れてきている。

「おそらくこの城にさらわれた女たちから取った人型だろう。つくづく悪趣味な男だ」
レプリカとわかってハヤテは剣を構え直した。
「粘土人形なら問題ねえ!斬れるぜ!」

ハヤテの二刀流が追ってくるレプリカを次々に崩していく。
「だが、やはり数が多すぎるな。全部と戦うのはキリがない。二手にわかれて撒くぞ。お前らは船長達を探せ。俺達は鏡を探す」
「ってオーイ!やっぱりお前と真珠ちゃんの組み合わせになるのかーっ!オレが何でシリウスの連中を探さないといけないんだーっ」
「お前は面倒だからこっちについてくるな。ハヤテとセットだ」
「待てよシン。オレだってロイと一緒なんてありえねーぞ。あっ、待てってシン、おいっ…!」

ロイとハヤテの背後から呼び止める声を受け流しながら先へと進む。
目の前で倒れたレプリカが落とした銃を咥え、彼女へと差し出した。

「し、シンさん…これ…」
「おそらく麻酔銃だ。護身用に持っておけ。お前には指一本触れさせない、と言いたいところだが、俺がこの姿じゃ万が一ということもある。いざとなったら撃て。…走るぞ」
「はいっ!」


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