Novel

□curse呪いの街
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目が覚めると、かび臭い牢の中に俺は横たわっていた。

「…ッ」

起き上がろうとすると、びりびりと身体中が痺れを走らせる。
俺は撃たれたはずだが…麻酔銃だったのか?
肩を撃たれたせいか、腕の感覚が戻らない。

「シンさんっ…!目が覚めたんですね!よかったっ!!」
●●が首元に抱きついてきた。

人間の姿になっている…?

「ごめんなさい。私が薬を飲ませたんです。あのひとが強力な麻酔銃だっていうから…ネコのままじゃ命が危ないと思って」
●●を見るとうっすらと左頬が腫れている。

「おい。その頬をどうした?」
「えっ…」
●●は慌てて頬を隠した。

「あのヤローがぶん殴ったんだよ」
壁越しにハヤテの声が聴こえる。
「あいつめ、許さん!オレの真珠ちゃんにっ!」
ロイの声も聞こえてくる。
あのまま全員、牢にぶち込まれたのか。

「シンが撃たれて●●が暴れたから、あの男が殴ったんだ。女を殴るなんてサイテーなヤツだぜ!」
「そうだそうだ!オレの真珠ちゃんにーっ!」
身体中の血がかっと熱くなる。

…アイツが殴った、だと?

「で、でも、私は大丈夫ですからっ。撃たれたシンさんのほうが心配です!」
「少し痺れるが俺は大丈夫だ。もしかしたらルルの丸薬を呑んでいたから麻酔が効きにくいのかもな。だがネコのままだったら危なかったかもしれない。お前の機転のおかげだ。礼を言っておく」
●●の小さな肩が震えている。
「どうした?頬が痛むのか?」
●●は勢いよく首を横に振った。

「…っ…こわ…くて。し、シンさんがっ…撃たれたって…し、死んじゃったかと思ってっ…こわ…こわかっ…」
がたがたと震える肩を力づくで抱き寄せる。
「俺は簡単に死んだりしねーよ。ちゃんと生きてるだろ?」
「…っごめんなさい。私を庇ってネコになっちゃったり…私が人質になったから撃たれたりっ…シンさんばっかりが危ない目にっ」
「本当だな。お前と出会ってからロクなことがねーな。もう俺に関わるな」
「…シンさん…」

「と、昔みたいに言ったら、お前は俺から離れるつもりなのか?」
「…っ、いいえっ!い、一生ついていくって決めたから…離れられませんっ!」

「フン。当たり前だ。お前が離れると言っても俺が許さん。だったらくだらないことで悩むな。俺がお前を守りたいと思って動いた結果こうなっただけだ。謝るくらいなら礼を言え」
「は、はいっ!…ありがとうございますっ」
「そう。それでいい」
そっと両手で頬を包むと、震えがおさまったのか、涙を我慢した顔のまま彼女は笑った。
「それに…人間の姿に戻れるのは僅かな時間だけだからな。もっと有効に使った方がいいだろ?」
「えっ…ゆうこうって?」
腫れあがった頬に、そっと口づける。

それから唇に――

「…ん」

「…ち、ちょっと待てむっつり眼帯ーっ!こんな時に何やってるんだーっ!」
「おい、し、シン…?聞こえてんだけど」
隣の壁からハヤテとロイの慌てた声が聞こえてくる。

「くそーっ!何で俺達は別の牢に閉じ込められてるんだーっ!ええい、邪魔な壁め!」
「ロイ!テメーが暴れるとオレまでイテーんだから大人しくしろよ!」

「うるせーなお前ら。15分しかねーんだから邪魔をするな」
「待てムッツリ!邪魔って何だ邪魔って!ナニするつもりだーっ」
「愚問だな。ナニって、コイツと二人ですることなんて決まってるだろ」
「し、シンさ…んんっ…こんな、とこ…でっ」
幾度も唇を重ねて、彼女の肌をあたためる。
男の指先で彼女に触れられるということが狂おしいほどに本能を掻き立てて、自制心の鍵を外しそうになる。

「っ…ふ…あっ、、、やぁっ…シンさ…」
「イヤ?そのわりにもうココはこんなになってるぞ?」
「…だ、だめっ…」
「何だ?恥ずかしいのか?ならもっと恥ずかしい格好にさせてやろうか?」
「あっ…」

「おい…し、シン…ま、待てよ。マジで何やって…
って、ちょっと待てロイ、おいテメー!!!」

どぉぉぉん

隣で爆発音がし、カチャカチャとカギが開けられた。
「真珠ちゃんの恥ずかしい姿だとーっ!!独り占めは許さんぞーっ」
俺たちの牢の扉が開き、ロイが駆け込んできた。

本当にコイツのしぶとさは、一番めんどくせーな。

「ん?眼帯、お前ネコに戻ったのか?」
またネコの姿に戻っていた俺は、すでに衣服を整えさせていた彼女を牢の外へと促す。

「どんなアホでも特技の一つくらいはあるもんだな」
「は、はい…ロイ船長、牢を開けていただいて、ありがとうございます」
「ありがとうじゃねー!オレは死ぬかと思ったぞ。あんな狭い場所で爆弾使いやがって!コロス気かよ?!つーかドコに仕込んでんだよ!」
ハヤテも閉じ込められていた牢から出てきた。

武器らしいものは全て回収されていたようだが――
「オレ様の鉄のパ●ツの中に決まってるだろう!お前と絡まってた黒い鎖が吹っ飛んだんだからいいじゃねーか」
姑息なロイなら身体のどこかに武器になるものを仕込んでいると思っていた。

しかもコイツはコソ泥みたいにカギを開けるのが上手い。
シリウスに乗りこんできてはカギのかかった部屋を勝手に開けているのを何度も見ている。

「つーかロイ、カギ開けられるなら最初からとっとと開けろよな」
「うるせーっ。オレだって鉄の●ンツに色々仕込んでたのをすっかり忘れてたんだ!ところで真珠ちゃんの恥ずかしい姿はどうなったんだ?!」
「うっ…は、恥ずかしい姿なんて、し、してません…よっ」

彼女は途端に真っ赤になる。
ロイを動かすためとはいえ、さっきまでシテいたことは事実だ。
ネコに戻ってしまったから途中まで、だが。

まぁ、いい。
我慢させたぶん、最後に与える褒美は格別に美味くなる。

「いいやオレには浮かんでくる!真珠ちゃんのあんな姿やこんな姿が、あの悩ましげな声からクッキリと!だが妄想ではマンゾクできねーからオレに見せてくれーっ!」
「う、うかべないでくださいっ!」
「お前なんかに見せてやるわけないだろ。さっきの爆発音で誰かくると面倒だ。さっさとここから出るぞ」

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