Novel
□curse呪いの街
12ページ/22ページ
「女を人質になんてきたねえぞ!…っんだよ!この気持ちわり―黒いのはっ!」
ハヤテが叫ぶが、男の放った黒い影にロイと共に絡め取られ、身動きができない状態になっている。
ふと見ると男の手の甲には文様が浮き出ている。
契約印、か。
ったく、シリウスに絡んでくる連中は巨大イカやらオロチ、悪魔に魔女。
どうしてこうも面倒くせーヤツが多いんだ。
一番面倒なのは、どこかのマヌケな変態船長かもしれねーが。
「相手の弱点を抑える。基本だ」
男が突きつけた銃は、彼女の白い肌に赤くめり込む。
どうやら…撃てるなら撃ってみろ、というハッタリが効く相手では無さそうだ。
コイツの瞳は闇を宿している。
流れるマドリガーレの狂った音のように、冷たく深く。復讐の色に染まりきっている。
目的のためには手段を選ばないと誓った、かつての俺のように―――
「貴様らのマヌケな仲間を恨むんだな」
「マヌケ?誰のことだ?」
ロイがハヤテの下敷きになった状態で首をかしげた。
ハヤテが怒鳴る。
「仲間なんかじゃねえが、てめーのことだよロイ!邪魔しやがって。クソ、もうちょっとで俺がコイツをやっつけるとこだったのによ」
「おいおい、お前ら、俺を助けてくれるんじゃなかったのか?なんてザマだ」
船長がニヤニヤと笑った。
「イヤ、船長に言われたくないっす!」
「そうだそうだー!リュウガ、お前こそ椅子に縛り付けられてイイ格好だな!ざまあみろ、ヒーッヒッヒッ!」
「仕方ねえだろ。城についたら綺麗なネエチャンがズラリと並んでてな。酒と食事を用意してくれるっていうからウキウキと座ったら手枷足枷でこのザマだ。アイツらはイキナリ麻酔銃で撃たれちまうし。女に手荒な真似はできねえしな。縛るプレイはシンの十八番だってのになぁ」
「俺なら縛られるより先に縛ってやりますね」
「はっはっはっ!お前は女にも容赦ねえからな。だがたまには縛られてみるってのも良いかもしれねえぜ?」
「御免ですね。俺は縛られて許しを乞う女を眺めている方がいい」
「シン、マジどS。船長、女に対して幅ひろすぎ。…オレはどっちもわかんねえ」
「ハヤテは女に関してウブだからしょうがねえな」
「縛るプレイならこのロイ様も得意だぞーっ!」
「つーか、船長。そんな古典的な手にひっかかったんスか」
「あ、おい。アホ剣士!今オレの言葉を当然のようにスル―したな!」
「ハヤテ、ンなこと言うが、えれえ別嬪揃いだったんだぞ!!」
「イヤどーでもいいっすよ、そんなの」
「どうでもよくねえぞ!どーせ捕まるならムサイ野郎よりも別嬪のネエチャンのほうがいいに決まってるじゃねえか」
「ふむふむ。それは重要だな。リュウガに一票だ」
「お、ロイ。珍しく意見が合うじゃねえか」
「くだらないお喋りはそれくらいにしたらどうだ」
冷えた男の声が釘をさす。
マヌケな会話の合間に隙ができればと思ったが、男は冷淡な態度で彼女に銃を突きつけたままだった。
「これで動けるのはネコ一匹だけだ。だが、お前が動けば女を撃つ。頑丈な対海賊用の銃が、ネコの身体にどれだけ効くか見ものだな」
彼女への銃は動かさぬまま、もう片方の手で男は一丁の銃口を俺へと向けた。
躊躇なく引き金はひかれる。
静かな銃声と共に鋭い痛みが肩を貫く。
「いやぁああ!シンさぁんっ!!」
泣き叫ぶような彼女の声が響き、視界がボヤけて、俺は意識を奪われた。