Novel

□curse呪いの街
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「カルロ・ジェズアルドは妻の浮気に狂い愛人と妻を残虐な行為で葬った。いや…自らは手を下さず貴族の立場を利用して部下にやらせた。公に裁かれてもいない。貴族は妻の浮気を裁く権利を与えられているからな。」
俺が喋ると、その姿を見て船長が驚いた声をあげた。
「もしかしてシンか?!ずいぶん可愛い姿になっちまってるじゃねえか。で?そのカルロってのは何なんだ?」
「今流れているこの曲を作った音楽家です。船長、コイツの女にでも手を出したんじゃないですか?」
「何だと?!うーん…覚えがあるような無いような。何せ俺を愛する女は世界中の港にゴマンといるからな」
「貴様のような男にマリアを奪われたと思うと虫唾が走る」
男は醜く顔を歪めた。

やはり女絡みか。

「せ、船長!やっぱり恨まれるようなことしてるじゃないっスか!?」
「マリア…マリア、マリア…うーん…あっ、随分昔にこの近くの港町で出会った色っぽいネエチャンか!」
「下賤な言い方をするな。穢れた海賊め」
男は吐き捨てるように言った。

「ならお前こそ下賤な勘繰りするんじゃねえよ。俺とマリアはそういう仲じゃねえ。へえ、マリアの旦那か。あれはいい女だったなぁ。アイツは元気か?」
「気安く呼ぶな。貴様の口から妻の名が漏れるだけで腹立たしい。」
マリア。壁に飾られたあの絵の女か?確かに美しい女だ。


「おいオッサン。お前こそ妻がいる癖にカースの街から飲み屋の娘をさらったんじゃねえのか?しかも水着とか集めてやがるし、変態浮気者はお前だろ?」
ハヤテが呆れたように男に言い捨てる。
「村人も湖の女も所詮は駒だ。私は悪魔との契約により願いを果たすまで力を与えられている。目的の為には些細な犠牲は仕方ない」
「人が亡くなっているのに些細だなんて…自分以外をそんなふうにしか言えないなんて、あなたは可哀想です!」
彼女がキッと男を睨みつける。
「お前のような小娘にわかるはずもないが、あの男は寿命だった。死は誰にでも同じように訪れる。」

「お前の目的とは、うちの船長の命か?」
俺の質問に男は応えずに唇の端をにやりと歪めた。
「なにィ?ハッハッハッ、そりゃやれねえな」
船長が拘束されたまま、大声で笑う。
「今俺が死んだら悲しむ女が多すぎる。お前の願いとやらは残念だが訊けねえな」
「黙れ。貴様に何が出来る。貴様の仲間の骸は海軍に送りつけてやる。どれも高額の賞金首だ。DEAD OR ALIVE。生死問わず、だったな」

「船長。本当にそのマリアって女とは何にもないんっスか?相当恨まれてっけど」
「バカ言え。極上の女だったが手を出してなんかいねえよ。そりゃ俺は出したかったがな。」
ハヤテが剣を構え直す。
ハヤテが男に攻撃を仕掛けている間に、俺が船長の拘束を解く。
下がっていろと彼女に視線を送ると、こくりと頷いて少しずつ後ずさる。
俺は気付かれないように船長の座すイスへと歩を進めた。

次にハヤテが床を蹴った瞬間が――好機。

「だとよ!やっぱりオッサンの逆恨みってヤツみてえだなっ!」
ハヤテが床を蹴り、剣を男めがけて振り上げた。

俺が滑り込み、船長の手かせに近づいた瞬間――

「おまえらーっ!!このオレ様を置いていくなぁぁぁ!!怖かったんだぞーーっ!!」
ドアが勢いよく開き、駆け込んできたロイがハヤテにぶつかる。

「チッ…」
男がバランスを崩したハヤテに再び黒い影を放ち拘束する。そして俺のすぐ横に立っていた
「油断のならないネコだ」
くいっと服を掴まれ、船長の椅子から俺の身体は勢いよく投げられる。
いつもより身軽な体は、床に打ち付けられる寸前にスルリと身をかわせるが、抵抗するだけの力は持っていない。

「シンさんっ」
彼女が悲鳴に近い声をあげた瞬間、
「そこまでだ。海賊ども。大人しくしてもらおうか」
彼女の喉元に男の銃が突きつけられていた。

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