Novel

□curse呪いの街
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「魔鏡?お宝か?!」
ロイが身を乗り出した。
「お宝、なんて良い物ではありません。危険な鏡なんです。魔女狩り戦争の時に命を落とした魔女たちの力が封じられた鏡です。おばあちゃんが封印したものなんですが、ロベールに取り上げられてしまいました。」
「魔女の力が封じられた鏡、か。どうしてそんなものが存在してるんだ?」
訊ねると、ルルは苦しげに話を続けた。
「魔女たちが無念さや悔しさを力と共に封じて、肉体が滅びても再び復活できるようにと作られたらしいです。でも犠牲になった魔女の数があまりに多くて鏡が力を持ちすぎた為、この家にある魔法陣しか鏡を完全に封じることができないんです。でも私にはロベールから取り返す力も無くて…」
「やっぱお宝じゃねえか」
ロイが笑うと、ハヤテがぽかっと頭を叩く。
「バカ。お前は話を聞いてねえのかよ。魔女のお、怨念とか籠ってんだろ?ユ、ユーレイとか出たらどーすんだよ?!」
「何だアホ剣士。もしかしてユーレイなんかが怖いのか?」
「こ、怖いわけねーだろ?!オレに怖いモンなんてねーし!」

「その鏡は『願望の鏡』と呼ばれていて、覗いた者の願う姿を導くと言われています。だからもしかして…シンさんの姿を戻してくれるかもしれないんです。湖の女神さんの役にも立つかもしれないし」
ルルがやけに歯切れの悪い口調で語る。
「でも、危険な鏡なんですよね…?」
彼女が不安げにルルに尋ねた。
「まずは、ロベールの城にあるということ。置かれている場所もわからないこと」
「ふん!オレたちは海賊だ。探せねえ宝なんてない!」
ロイが勢いよく応えた。
「それにロベールとかいう貴族もオレがこの剣でブッタ斬るしな!相手が生身の人間なら問題ねえ!」
ハヤテが剣をぐっと握る。

二人の様子に彼女は少しだけ和らいだ表情を見せたが、ルルは強張った顔のままだった。
「もし万が一鏡を見つけて覗いたとして…鏡にどんな誘惑や代償を求められるか、わからないんです」
「鏡が、誘惑や代償を?」
聞き返すと、ルルが大きく頷いた。
「もともとは、この世界と死後の世界をつなぐために魔女達の怨念が込められた鏡なんです。おばあちゃんには、危険な鏡だから近付くなって言われてましたし、どんなものか実際にはわかりません。
布がかけられた姿でさえ、今でも思い出すだけで震えます…迂闊に手を出すとどんなことになるか…」

「面白そうだな」
俺が口にすると、ルルは驚いた顔を見せた。
「一筋縄でいかないものを手に入れて従えるのは嫌いじゃない。」
「は〜、シンってマジでどSだな。オレはそんなイワクつきなモン、めんどくせーけど。ま、どっちみち、その城に行く予定だし仕方ねえよな」
ハヤテが笑うと、
「で、でもっ、危ないんですよっ?!鏡を覗いても元に戻れるかどうかもわからないんですよっ?!そもそもロベールの城で見つけられるかもわからないしっ」
ルルが慌てた様子で言い返す。

「鏡の細工は金か銀か…それとも真珠か!?ヒーッヒッヒッ。思わぬところでいい情報を聞いたぞ。願望が叶う鏡はこのロイ様のものだ!願望か…あんなことやこんなこと…」
ロイがニヤついた表情を浮かべた。

がりッ
その顔を引っ掻いてやる。

「いってえ!何するんだ黒猫眼帯!オレの至福の妄想タイムを!」
「お前の頭の中なんて手に取るように分かる。想像すら許さねー」
「何ぃ?!手に取るようにわかるのかっ!さ、さてはむっつり眼帯、お前さてはっ…相当な変態だろ?!」
「馬鹿か。」

「あなたはいいんですか?危険なんですよ?」
俺達が言い合っていると、ルルが振り返って●●に訊いた。
「はい!シリウスの皆と、シンさんと、一緒なら。どんな危険だって大丈夫って思えるから。私はどこまでだって一緒に行くって決めてるんです!」
彼女が凛とした表情で言い放つ。
「それにシンさんが元に戻れる可能性があるなら、絶対に見つけて見せますっ」
「それでこそ、俺の女だ」
褒めてやると、●●は嬉しそうに目を細めた。

「真珠ちゃーん。シリウスみたいな繊細さの欠片もない海賊団と違って、知的なこのロイ様もいるぞ〜!」
「あ、あはは。…ロイ船長も、ちょっとだけ、頼りにしてます」

「おい。こんなヤツに気を遣ってやる必要はないぞ」
「やった〜!!!真珠ちゃんに頼りにされたーーっ!!!これは夢か?!夢じゃないよな!オレは世界一頼りになる海賊なんだーっ!」
「ちょっとだけって言われてんのに、バッカじゃねーの?」
「ふふん。さては頼りにされたオレに嫉妬しているな?」
「ったく、どこまでも幸せなヤツだな」

俺たちを見廻して、ルルがくすっと笑った。
「敵わないと思って私はずっとロベールの言いなりになってきたけど不思議な海賊さん達ですね。そもそも湖の女神さんとも親しい訳じゃないのに、こんな処まで来るなんて」
「ソレはうちの船長がタダ酒とタダ混浴につられて、ってダケだけどな」
ハヤテの言うとおりだ。
「ふふ。でも、あなたたちはその船長さんのことや仲間のことを信頼してるんですね。魔女や悪魔をちっとも怖れていないし」
「フン。そんなものが怖くて海賊が出来るか」
「あなたたちなら何とかできそうな気がしてきました!さっきの丸薬を急いで作りますね。例え数分でも人間の姿の方がいいこともあるでしょうし。あと、役立ちそうなものを用意します!」
「ルルさん、ありがとう!」
彼女が深く頭を下げた。

「さぁ!急いでコウモリの内臓を集めなきゃ!」
「え?こ、コウモリの内臓?!」
●●が聞き返す。
「うん!丸薬の材料ですよっ!」
ルルは満面の笑みで答え、ロイとハヤテは口元を押さえ、俺を振り返った。

その青ざめた顔に言い放ってやる。
「フン。何が入っていようと、効くなら問題ない」

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