Novel

□curse呪いの街
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翌朝――

「かんせーいっ!」
ルルが大声をあげて部屋へと飛び込んでくる。
昨夜の雪は幻のように、窓から眩しい太陽の光が差し込み、暖かい空気が部屋を包んでいた。

「さぁ、ネコちゃん!…じゃなかった、シンさん。この薬を呑んでみてください!」
目の前に怪しげな丸薬が差し出される。
「これは何だ?」
「え?魔法書を隅々まで読んで作ってみた、動物を人間に変える薬ですっ!味はまずそーだけど、効果は多分大丈夫!」
「多分?」
俺が聞き返すと、ルルは意気込んだ声調を弱めた。
「ええと…きっと??」

「うへ〜。マズそう」
ハヤテが顔をしかめる。
「美味い薬なんかあるか」
味はどうでもいい。
要は戻れるかどうかだ。
かなり怪しいが今のままよりはマシだろう。
黒い丸薬を一気に飲み込む。

「…ッ」

喉を通った途端、身体中が焼けるように熱くなり、手足が一気に伸びていく。
気付けば俺は元の姿に戻っていた。

「し、シンさぁん!!戻れましたねっっ!!」
戻った首元に、彼女が泣きながら抱きついてくる。
「くそう、眼帯!戻ったか!戻らなければ真珠ちゃんは永遠にオレのものだったっていうのに!」
ロイが毛布に包まったまま、悔しそうに唸った。
「バカか。お前にコイツを渡すわけねーだろ」
「ふわ〜。黒ネコちゃんの時も美人でしたけど、シンさんって綺麗な顔してるんですねぇ」
近くで不安げにしていたルルが顔を覗き込んでくる。

「フン…」
「とにかく戻ってよかったぜ。最強のシリウス海賊団の航海士がネコってのは格好つかねえし!」
ハヤテが笑った途端、ルルが言い放った。

「あ、ひとつ言い忘れましたが…その薬、3分で動物に戻っちゃうんです」


「ええええええええっ!!!!?」

彼女とハヤテが大きな声をあげる。

…3分で戻る?

「3分でどうしろと…」
俺が溜息をつくと、ルルが慌てて応える。
「試薬なので3分だけど、もうちょっと頑張れば最大30分には伸ばせると思うの!」
「そういう問題じゃなく、完全に戻る方法はないのか?」
「うーん。改良に成功したら1時間くらいまでかな」
「つまり、完全に戻る薬はないってことだな?」
念を押すと、ルルは小さく頷いた。


ぼんっ

言い合っているうちに、身体が煙に包まれみるみるうちに再びネコの姿に変わっていく。

「うわ!マジで戻っちまった!スゲー」
ハヤテが驚いた顔を見せる。
「ルルさん…本当に何とかならないんですか?」
喜びにあふれていた彼女の瞳の端にうっすらと涙が浮かんだ。

「し、真珠ちゃん!な、涙か?!泣くなーっ」
ロイが騒ぎ出し、両手を広げる。
「オレは眼帯がどうなろうとどうでもいいが、真珠ちゃんの涙は見たくないっ!さあ、オレの胸で涙を拭いて元気を出すんだ!」
「け、結構ですっ。な、泣いてませんっ!シンさんを元に戻すまで泣いてなんかいられません!」
彼女が大声で叫ぶと、ルルは決意をしたように険しい表情のまま言葉を続けた。

「昨晩思い出したんですが…ひとつだけ、方法があるかも」
「何だよルル!そんなモンがあるなら早く言えよ」
ハヤテが先を急かす。
「ロベールの屋敷に魔鏡があるんです」


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