Novel

□Spaの街
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??「お嬢さん。あなたが落としたのは何ですか?」
光の中から突然声がして、見ると白い布を纏った綺麗な女の人が立っていた。

●●「どなたですか?」
服を着て温泉に入っているなんて、店員さんなの?
湯の女神「私は湯の女神です。あなたが落としたのは、金のカギですか?」
何かの催し物かな…?
でも、とりあえず水着を返してもらわないと!
●●「えっ!あの、違います。カギじゃなくて水着を落としました」
湯の女神「では、銀のカギですか?」
●●「いえ。ですから金とか銀のカギではなくて、普通の水着のトップをなくしてしまって」
湯の女神「あなたは正直者ですね。褒美に金と銀のカギ、それから普通のカギもさしあげましょう」
●●「こ、困ります。カギは結構ですから、あの、水着を…」

こちらの言葉が全く届いていないといった様子で、湯の女神だという女の人は消え、光も消えた。
辺りを見回しても、滝のお風呂にぽつんと私は一人で、誰も居ない。
他のお風呂に入っている女の人たちも別段変わった様子は無く、誰も何も不思議そうにしていない。

(ゆ、夢…?)

私が寝惚けてたのかな?
けれどビキニのトップはかえってこないままだし、手にはいつしか3つのカギが握られていた。
●●「カギなんてもらってもどうしたらいいんだろう。水着も無くしちゃったし…」
途方にくれていると、目の前の滝が突然割れて金の扉が現れた。

●●「な、なにこれ!?ここにカギを差し込めってことかな?もしかしたら、水着が見つかるかも…」
タオルで胸元を巻いて結ぶと、そっと鍵穴に金のカギを差し込む。

また辺り一面が光に包まれた。

(まぶしい…!)








あれ?露天?

気が付くと私は木々に囲まれた露天風呂に一人、入っていた。
いつのまに私、こんなところに?
一体どこだろう。

太陽がいっぱいに差し込んで、木漏れ日が零れてくる。
湯はキラキラと光を反射して気持ちがいい。
あまりの心地よさにうっとりしていると、少し離れたところにある岩の後ろから、ちゃぷんと音が聞こえた。

●●「だ、誰かいるんですか?」
とっさに身構えるけれど、見慣れたその姿を目にとめて、私はほっとする。

●●「シンさん!」
シン「……」

湯に浸からないって言っていたのに、そこにはシンさんがいた。
眼帯は外している。

●●「みなさんはどこにいるんですか?」
シン「他のヤツはいない。」
●●「え?どうしてですか?」
私の質問には答えずに、シンさんは濡れた髪を掻き上げてからじっとこっちを見つめてくる。
潤んだ瞳で見つめられると、のぼせそうなほど身体が熱くなってきた。

シン「●●…俺たちは今ふたりきりだ」
すぅっとシンさんが近付いてきて、私の両手を握った。
●●「あ、あのっ…」
シン「お前は本当に可愛いヤツだな」

えっ?!

シン「俺はお前が可愛くてしょうがない。●●なしでは、生きていけそうにない」

何だか…シンさんだけど、シンさんじゃないような。

だって、こんな恥ずかしくなるようなセリフは言わない気がする。
優しい言葉をくれる時もあるけど、ごく稀というか何ていうか。
メンドクサイとか言われたりするし。
わざと意地悪で言われるとか、危険にさらされた時とか、とにかくタダでは言ってくれない気がする。

シン「どうした?不思議そうな顔をして。そういう顔も魅力的だが…好きだという俺の言葉が足りないのか?」
ぐっと顔を近づけられると、シンさんの綺麗な顔が目の前にきて、ドキドキしてしまう。
見た目は、どこから見てもシンさんなんだけど…。

●●「あの…シンさん、何だかオカシイですよ?」
シンさんの指がそっと私の髪を梳かした。
シン「オカシイ?何を言ってる。どうみても俺だろ?ほら、俺を見ろ」
瞳を見つめると、背中に手を回されてぐっと抱き寄せられる。
●●「きゃ…!」
水着をつけているみたいだけどシンさんの上半身は裸で、抱きしめられると私達の肌を隔てるのは、私の胸に巻かれた薄いタオル一枚。

伝わる鼓動が、少しずつ速くなる。

シン「もう抑えられない。いますぐ全て…奪ってもいいか?」
頬にそっと口づけられる。
シン「●●、愛している…」
それから、額、まぶた、唇と、ついばむように何度もキスをされて。
きらきらと差し込む木漏れ日が柔らかく二人の肌を照らし、心地よい湯のぬくもりが強張る身体を解いていく。

甘く優しいキスは、いつものシンさんと同じ。
今日は、ちょっとだけいつもより優しいだけなのかな?
蕩けるようなくちづけと、がっしりと抱かれた力強い腕に。
ここがどこかも忘れてぼぉっとしていると、途端にあたり一面が、強い光に包まれた。

(また?!まぶしいっ…)


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