Novel

□Spaの街
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皆とは別の女性用の入り口をくぐると、店内は広くて清潔な印象だった。
タヌキの置物があるのはヤマト風のようだけれど、ビーナスやらよくわからないお面やら、トラが描かれた屏風やらと不思議な飾りまで処狭しと飾られている。
多国籍な内装をじっと見つめていると、清掃をしていた年配の女性に笑顔を気さくに向けられた。

女性「色んなモンが置かれてるだろ?」
●●「そうですね。珍しいものがいっぱいです」
女性「ここの経営者が骨董集めが好きでね。色々集めてはこの店に飾るのさ。こんなこと大きな声じゃ言えないが、悪趣味ったらありゃしない。」

それで、こんなに変なものが…。

女性「あたしにしちゃ温泉に水着なんて野暮だけど、お嬢ちゃんみたいに若い子なら水着を着た方が安心かもね。脅すわけじゃないけど最近はタチの悪いお客さんもいてさ、こないだ女湯に突然男が降ってきたんだ。きけばここいらの温泉を荒らしていた覗き男っていうじゃないか。本人は単なる事故だって言ってたけどあれは絶対、筋金入りの変態だね」
●●「の、のぞきっ?!」
女性「心配しなくてもソイツは番頭が捕まえたよ。あたしもそれからは目を光らせてるんだし、安心して入っといで。湯の質は保証つきだからさ」
●●「ありがとうございます」

変態さんかぁ…。
怖いひともいるんだなぁ。
気をつけようっと。

女の人は文句を言いながらも、そばにあった鬼のお面を丁寧に磨き始めた。
この多国籍趣味には慣れそうにないけれど、人もまばらでゆっくりできそう。
船長には『コンヨクに来い』と言われたけれど、シンさんにはダメって言われているし、大人しく女湯に浸かろうかな。

言われたとおり、念のために水着を着る。
受付で一番可愛い柄のビキニを選んだつもりなんだけど。
何だかこれ…思ったよりものすごく布が少ないような??
変態さんは捕まったって言ってたし、混浴に足を運ばないなら女の人ばかりだし、いいよね。

中に入ると色んな種類のお風呂があった。
花びらが浮かんでいる優雅なものもあるし、大きめの樽に湯がはられている一人用のものもある。
●●「うわぁ〜!すごいなぁ!こんなところ初めて」
思わずため息が出るけれど、相槌を打ってくれる人もなくて独り言になってしまうのは少しだけ寂しい。
とりあえず、一番奥にある誰も入っていない滝の流れているお風呂に身体を入れる。

●●「あたたかくて気持ちいい〜」
大きく深呼吸をする。
シリウス号のシャワールームも好きだけど、やっぱり大きなお風呂っていいな。
ヤマトにいた頃は、しばらく歩いた山の中に源泉があって、家族で時々出かけて行っては入ったなぁ。
弟は湯の中で泳ぐのが大好きで。
誰もいないし、大きな湯船の中でちょっとだけ泳いでみようかなんて手を伸ばして前に進むと、くいっと後ろに引っ張られる感覚に襲われる。

え……?!

ズルリ

ビキニのトップが滝へと引っ張られてる?!

●●「きゃっ…」

華奢な紐が滝の中にスルスルとあっという間に引っ張られて消えてしまった。
●●「な、なに…?」
胸を手で抑えながら、滝の中を覗く。

岩か何かに引っ掛かったのかな??

滝の近くに顔を近づけてみると、突然ぱぁ〜っと辺り一面に光が差してきた。


(ま、まぶしい…!!!)


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