Novel

□Spaの街
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「わたしなら別に温泉に入らなくても全然かまいま…」
そう言いかけた時、
トワ「あ!あの向かいのお店、ヤマトっぽい造りだし他と比べてすいているみたいですよ」
トワ君が一軒の店を指さした。

入口の脇にビーナスとダビデ像が飾ってある趣は全然ヤマト風ではないけれど、<ゆ>とヤマトの言葉で書かれたのれんがかかっている。
ナギ「コンヨクって何だ?」
●●「こ、こんよく?!」
ナギさんの視線をたどって看板を見ると、そこには『コンヨクあり』と書かれていた。

ソウシ「コンヨクっていうのは男性と女性とが一緒に入れるお風呂らしいよ」
リュウガ「なにぃ?!ヤマトにはそんな楽しい風呂があるのか?!…●●、船長命令だ!シンがオンセン嫌いだろうと、せっかくのオンセンだしお前も俺たちと来い!」
●●「ええっ!船長命令ですかっ…」

ど、どうしよう…。
船長命令には逆らえないけど…。

トワ「じ、じゃあ●●さんも僕たちと一緒にお風呂に入るんですかっ?」
ハヤテ「だ、だめだろ!?そそそそれはダメだろ?!いくらガキくさいっつっても女だしっ」
トワ「でもコンヨクって一緒に入るものなんですよね?!」
ソウシ「コンヨクというのは男女かまわず湯に皆で入って交流を深めるものらしいけど…●●ちゃんが嫌なら無理に入ることはないからね。」
ナギ「………」
シン「……おい」

………皆の視線が、痛い。

特に、シンさんの思い切り不機嫌そうで何か言いたげな視線がグサグサと突き刺さってくる。

●●「あの、混浴はやっぱりちょっと恥ずかしいかなと…」
そう言いかけると、例のお店から番頭さんらしき人が出てきた。

番頭「お客さんたち、旅の方ですか?うちの風呂は古くから有名な薬湯で種類も豊富ですし、浸かればあっという間に体の疲れが吹き飛びますよ。今ならなんと料金半額!お得ですよ」
リュウガ「半額か。悪くねえな。…で、コンヨクだというのは本当だろうな?」

番頭「ええ。男湯と女湯をそれぞれご用意しておりますが、奥にもう一つ露天がありましてそこがコンヨクになっております。温泉は水着着用でOKですよ」
●●「でも水着なんて持ってないし」
番頭「受付でお売りしています。お嬢さんに似合いそうな可愛らしいものもございますよ」
水着OKなんだ…恥ずかしいけどそれなら何とか大丈夫かなぁ。
リュウガ「水着無しでも俺達は構わねえがな!」
●●「私は構います…」

番頭さんはダメ押しのように、ぼそっと船長の耳元で囁いた。
番頭「ただいま隣国の姫がお忍びで来られてまして…もしかしてコンヨクにいらっしゃるかもしれませんなぁ」
リュウガ「姫さんだと!?よし!迷うこたぁねえ!!はっはっは!野郎ども!俺に続け!!!!」
トワ「あ、船長!待ってください〜」
ソウシ「他はいっぱいみたいだし、せっかくだから入ってみるのもいいかもね」
ナギ「……ああ」
ハヤテ「こ、コンヨク…いや、コンヨクはいくらなんでも…俺はべつに全然いーんだけど女がソレはマズイだろ…」
シン「フン、バカめ。何をブツブツ言ってるんだ」

番頭「はい、お客様7名様ご来店〜!!!」
番頭さんは大きな声で店内に告げる。

あれ?7名?

見ると、街を散策すると言っていたシンさんも店の入り口に足を向けている。

ソウシ「あれ?シンはオンセンに入らないんじゃなかったかな?」
シン「…気が変わったんですよ」
皆のあとを追って店に入ろうとして、シンさんがぐいっと私の腕をつかんだ。

シン「●●。俺はオンセンなんて浸かるつもりはないが…お前、コンヨクには入るな」
●●「で、でも水着でOKみたいですし…船長が…」
シン「お前は貞操観念の無いはしたない女なのか?」
ええっ?!
●●「普通にありますけど…」
温泉ってそんな大げさなものだったかな……
シン「なら俺の言うことを聞いておけ。いいからコンヨクにだけは絶対行くな。具合が悪くなってコンヨクにはいけなかったとでも後で言っておけ。大人しく女湯だけに浸かっていろ。返事は?」
●●「は、はい…」

さっきまでは温泉に興味なさそうだったのに、もしかして心配してヤキモチをやいてくれているのかなぁ。
他のみんなと入るのは恥ずかしいけれど、シンさんとなら、ちょっとだけ…一緒に入ってみたかったな、なんて思ってしまう。



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