Novel

□tukimi
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注※中身入れ替わってます※ハヤテ⇒シン、シン⇒ソウシ、ソウシ⇒ナギ、ナギ⇒ハヤテ、ロイ⇒ヒロイン、ヒロイン⇒ロイ※
「中身が入れ替わる月見団子か」
船長が顎髭を撫でながら、縛られた状態の私(ロイ船長)とロイ船長になっている私を見比べる。
「随分とおもしれーことになってるじゃねえか。俺だけ仲間ハズレか?」
「せ、船長!」
何故かナギさんが慌てて声を掛ける。
「幸いもうすぐ夜明けだ。無事に戻れるといいんだがな。いくら中身が●●とはいえ、見た目がロイだとセクハラしても全く楽しくねえ」

「ロイ、変な団子を売ってたのはどんなヤツだ?」
ソウシさんがたずねた。
「小さい女の子じゃなかったですか?」
トワ君が質問を付け加えると、
「いいや。キレーなお姉さんだったぞ。一目見て恋に落ち…いや!オレは真珠ちゃん一筋だけどな!魔がさしたんだ!」
私(ロイ船長)が言い訳するように慌てて答える。

「私とロイ船長は元に戻れるんでしょうか?」
不安に思って訊ねると、ハヤテさんが答えてくれる。
「一晩月見をして朝陽をあびれば良いらしいが、条件を満たしているかが疑問だな。『嫌いなヤツに知られない』ことが必須だとすれば、ロイの方に問題が出てくる」

そ、そうだ…!
シンさんは甲板の端で眠ってるからまだ知らないけど…
リュウガ船長。
ハヤテさん。ナギさん。
ソウシさん。トワ君。
皆、私とロイ船長の入れ替わりを知ってしまった。
私が皆さんを嫌いなんてことはないけれど…
ロイ船長はどう思っているんだろう…?

「ならオレは一生この可愛い身体のままかもな!シリウスに嫌いな奴なんていっぱいいるぞ!」
「だろうな」
リュウガ船長が笑う。
「戻れない可能性も出てきた。どちらにせよ…船長、夜明けと共に市場でロクでもねえものを売ってたヤツを掴まえに行きたいのですが」
ハヤテさんが提案すると、
「そうだな。次の目的地はまだ決めてねえし、もうしばらくこの町に停泊してそのおもしれー団子を売ってたヤツを探しに行くか」
船長の同意を得て、皆ほっとした表情になった。
「つーか、ロイだってわかってても●●の顔してシリウスが嫌いとか言われるとイイ気分しねえよな」
ナギさんが溜息をついた。

「いくらでも言ってやる!リュウガは偉そうだから嫌いだ!オレに冷たいし、オレのことを無視するしっ!オレが昔みたいな関係を結成してやろうって歩み寄ってるのに靡かねえし!」
ロイ船長の告白に皆驚いた顔になる。
「…それ、かまってほしいだけじゃねえのか」
ソウシさんが呟いた。
「今の姿ならかまってやらねえこともないが」
「そ、それは私が困ります…」
船長の言葉に思わず口を挟むと、
「がっはっは!冗談だ。中身がロイじゃ萎えちまう」

「リュウガも腹が立つが…性悪眼帯はすぐオレに暴力振るうし、無口コックは殺られるかってくらい怖い目で睨んでくるし!剣士は…ええと、ガサツだし!」
「今テキトーに付け加えただろ!」
ナギさんがツッコんだ。
「ふん。剣士と見習いはロイ様の眼中にない!センセーは唯一優しいけどオレがちょっかいかける女の子は皆センセーがオイシイトコ持っていっちまうし!」
「それは仕方ねーな。ドクターは天然タラシだ、諦めろ」
ハヤテさんが諭すように言う。

「そーゆーワケでオレはシリウスの連中が嫌いだ!いつも街で女の子にチヤホヤされやがって!うらやましくなんかないからな!」
うらやましいんだ、ロイ船長…。
「だが見ろ!今の俺はお前たちが大好きな真珠ちゃんの身体になっている!ずっとこのままかもしれない!!どーだ!うらやましすぎるだろう!はーっはっは!」
私(ロイ船長)は勝ち誇ったように皆さんを見回した。
…私の顔で高笑いされると…恥ずかしい。

「口塞いどくか」
ソウシさんが縄を取り出した。
「猿ぐつわか。俺がする」
ハヤテさんが名乗り出る。
「なに楽しそうな顔してんだよシ…ハヤテ」
ナギさんがハヤテさんを窘める。
「見た目が●●なら色々試せる」
「おい、●●が引いてるぞ」
ソウシさんが私を見る。
「え!いえ…その、ハヤテさんって…そんな趣味あったのかなって」
「ねえよ!」
何故かナギさんが慌てて答えた。

猿ぐつわをしようとしたハヤテさんを船長が制してから、言う。
「なぁロイ、お前はその身体から戻れなくてもいいと思ってるかもしれねえがな…本人になっちまってるってことは、抱いたりキスしたりっつーのが出来ねえってことだ。俺はそんなの羨ましいなんて思わねえ。可愛がることが出来るのは他の身体だからこそだぞ」
「……」
ロイ船長は考えるように黙りこんだ。

「いつも●●はロイに触られて嫌がってるしそもそも●●がロイを好きになるなんて可能性は…」
ナギさんが言いかけて、
「ゼロかどうかは誰にもわからねえ。全員同じ土俵にいて、まだ誰も奪い取れてねえ状態だからな」
船長の言葉に全員が黙り込む。ドキンと胸が波打って思わず意識してしまう。

船長が言ってることって…
いつか私が誰かと恋に落ちるかもってことなのかな…





「お、朝陽だ」
船長が顔を向けた方角を、いつもより眩しい気持ちで皆が眺める。
暗い海の向こう側から待ちわびた光が覗こうとしている。

「リュウガ、オレは絶対元のカッコいいロイ様の身体に戻るぞ!この真珠ちゃんの身体に触れるのはそれからだ」
初めて見るかもしれないロイ船長の真剣な表情にドキッと鼓動が早くなる。
「触らせねえ」
ソウシさんが呟く。
「ああ、当然だ。」
ハヤテさんも頷いた。
「戻ってからの勝負だな」
ナギさんが意味ありげに言う。
「僕だってお守りします!」
トワ君が手を挙げた。
「そういうことなら私も黙っていられないね」
いつしかシンさんも側に戻ってきていた。


不思議…
シンさんがソウシさんに見える。
ソウシさんがナギさんに。
ナギさんはハヤテさんに。
ハヤテさんはシンさんに……

そうだ。
そう考えれば今夜の宴はすごくしっくりとくる。

優しくて色っぽいシンさん。
無骨で男っぽいソウシさん。
ムードメーカーで明るいナギさん。
冷静で大人っぽいハヤテさん。

いつもと違う夜だったのは…
そうだったんだ…



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