Novel

□Trick or …? before Christmas
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部屋へ戻ってからも、まだ夢が続いているような気がして、シンさんにぎゅっと抱きつく。

「今日は随分積極的だな」
「そんなことっ…」
「身体に聞いてみるか?」
シンさんの手が太腿を伝って付け根へと擦り上がってくる。
「っ…い、いきなり…ふぁっ」
ビクンと身体が跳ねる。
「ココも積極的みたいだな?」
シンさんの指は慣れた様子で私の敏感なところを虐めはじめる。
「やぁ…それっ…む、むりっ」
「あんまり声を出すとアイツらに聞こえるかもしれねーぞ」
「やっ…やだ」
「嫌がってるようには見えねーけどな」
囁かれるとゾクゾク震えて溢れてくる快感に、だらしなく絶頂しそうになる身体を抑えてシンさんを見上げると、シンさんはますます余裕たっぷりに微笑んでいた。
自分だけが火照っている現実に、かあっと頬が染まるのがわかった。

「うぅ…昨日のシンさんはもっと必死で、こんなに意地悪じゃな…」
「昨日?」
ぴたっとシンさんの手が止まった。
「?最近はシてねーだろ」
「え?そ、そうでした?」
「おい。誰と勘違いしてるんだ?」
シンさんが怪訝そうに見つめてくる。

「あれ?間違えちゃったみたいです。昨日確かにシンさんとこうして…で、眠った気が」
「また夢でも見てたのか?欲求不満か?」
「ちちちちがいますよっ」
「フン。まぁ船の上じゃあまり出来ねーしな。それはそれで俺はお前の我慢した顔が見れて楽しめるけどな」
「っ…楽しんでいただけて光栄です…けどっ…あっ、だめ…」
「声、おさえろよ?」
シンさんの綺麗な顔が近づいて――




ぼんっ

<Trick or Treat!別れの挨拶にきたぞ!>
「…」
「…」

私とシンさんの間にカボチャがふわふわと浮いている。

「…チッ」
シンさんが盛大に舌打ちをした。

「か、カボチャさん!」
三角目のカボチャさんが目の前にいる。

<邪魔だったか?>
「ああ。またその顔を撃ち砕いてやろーかってくらいにな」
シンさんの声が低い。
<空っぽの俺だが、●●のことは覚えていたぞ。元の世界への戻り方を思い出したんだ!だからクリスマスが来る前に着けるように、もう行くことにした>
「とっとと行け」
シンさんはカボチャさんを追い払うようにヒラヒラと手の甲を振った。

「元の世界?帰れなくなってたんですか?」
カボチャさんに訊ねると、
<そうか。俺と●●の楽しい時間のことはやはり忘れてるよな。まぁいい。それでいいんだ。俺だけが覚えている。だからあっちへ行っても寂しくないぞ>
「おい。楽しい時間ってどういうことだ?お前…コイツにまた妙な嫌がらせをしたのか?」
シンさんが怪訝そうな顔をした。
<嫌がらせじゃない!イタズラだ!と言うか依頼だ。ったく、シン。君は俺に感謝していいくらいだ!これから毎年ハロウィンは俺をここへ呼んでもてなしてくれ>
「二度とくるな」
「し、シンさん。そりゃあハロウィンの時のイタズラは困ったものでしたけど、結局二人で乗り越えられましたし!」
<さすが●●はわかってるな。来年はもっと凄いイタズラをするから楽しみにな!>
「ふふっ。待ってますね」
「●●…また変なモノに懐かれやがって」
<変なモノじゃない!道先案内人だ!●●があっちの世界に行くときは俺が案内してやるぞ>
「断る」
<シンには聞いてないぞ!本当にお前は俺を怖れる気持ちが足りん>
「たかがカボチャだろ」

カボチャさんはシンさんの耳元に行き、何かを呟く。
シンさんが目を見張る。
「おい!それはどういう…」

<たかがじゃない事を思い知ったか!じゃあな!>
カボチャさんはシンさんから逃れるようにふわっと浮き上がり闇へと消えていった。

「シンさん?カボチャさんは何を?」
「ありえねー」
「?」
「いや…ありえねーが…初めての女もお前だったとはな」
そう言ってシンさんは幸せそうに笑って私の頬に手を添える。

「さっきの続きをするか」
「えっ?」
「夜は段々と肌寒くなる時期だ」
「は、はい…」
「●●。俺を、あたためてくれ」










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