Novel

□SiriusBoeki
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SIRIUS.BOEKI.@車内【Heroine】

「シンさん…機嫌悪い…ですか?」
「いいや」
そ、その『いいや』がすでにかなり不機嫌っぽいんですけど…っ!

「なぜ俺の機嫌が悪いと思うんだ?」
「えっと、ナギさんに助けてもらったから…とか?」
「助けてもらって良かったじゃねーか。この俺がそんなことでいちいち機嫌が悪くなるわけがないだろう?自惚れるな」

う…。

ならどうして、さっきからずっと眉間にシワが寄ってるんだろう。
私の方が先に玄関に着いたから、シンさんを待たせてはいないはずだし…。

「ですよねぇっ…自惚れてました!ごめんさないっ」
思いっきり謝ると、シンさんがチッと舌打ちをする。
「…バカか、お前は。どうして謝るんだ?」
「どうしてって言われても…」
「謝るような感情をナギに対して持ってるとか」
「え?ま、まさかっ…」
「ったく…ブザマすぎる」
「あの…私がですか…?」
「俺がだ」
シンさんはふいっと顔を逸らせてから呆れたように溜息をついた。

「ああ、そーだよ。ナギがお前に触っていたのも気に入らねーし、わざとらしく俺に宣戦布告したのも気に入らない。だが、そんなことでいちいちイラついている自分が一番、ありえねー」
シンさんがハンドルを切りながら一気に吐き出す。
絶対に笑ってはいけない空気のはずだけれど、拗ねたような顔が可愛らしくて、私は思わず顔を弛ませた。

「それって、もしかしてヤキモ…」
「うるせー。悪いか」

「ふふっ。嬉しいです」
「ニヤニヤするな、アホ」

「アホでもいいんです。嬉しいんだもん!」
「フン…変なヤツ」

そう言うシンさんの眉間のシワはいつしか和らいで、優しい顔になっている。

「…せっかくの夜が勿体ねーな。この話は終わりだ。お前と話していると何にイラついていたかも忘れそうなほど気が抜ける」
シンさんがふっと笑う。
海沿いを走る車を照らす夜景が、シンさんの笑顔を眩しくさせて。

これから何処へ向かうんだろう?
どんな夜が始まるんだろう…?
滑らかに走るポルシェのように鼓動はどんどん加速していく。


「あのぅ…シンさん。ところでパンツはいつ返してもらえるんでしょうか?」
裸のお尻にスカートが張り付いて、もぞもぞしてしまう。
「ちゃんとオネダリできるようになったらな」
おねだりっ?!

「ど、どうすれば…」
「そーだな。どこに返して欲しいのか俺に見せてみたらどうだ?」
「どこにって…見せるって…もしかして…・」

今、スカートをめくるってこと?!
帰宅ラッシュの道路には大きなバスも走っている。
車高が高い車からは丸見えになってしまう。

大きな車が側を走っていないことを確認してから、震える手で少しだけスカートをまくりあげる。
「それじゃあ見えねーな」
「これ以上は…できません…っ」
「なら仕方ない。ずっと履かないままでいろ」
「うう…」
スカートをあげようと試みてみるけれど、その度に車が横切って諦める。
シンさんはわざと車をゆっくり走らせて、楽しそうに私の様子を窺っている。

「もう許してください…お願いします…」
恥ずかしさで身体中が熱くて泣き出しそうで、懇願するみたいに言うと、シンさんは満足げに微笑んで、
「上出来だ」
ポケットから取り出したショーツを膝の上に返してくれた。
「ありがとうございますっ」
見えないように気をつけながら、急いで下着を着ける。

その様子をシンさんは愉快そうに見つめている。

「どうせまたすぐ、自分から脱ぎたくなるけどな…」
不敵に笑うと同時に、長い指が太腿へと伸びてきた。


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