Novel
□本編 Shinside
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24.告白
「ううう。まだムズムズするぜ」
「ぶはっくしょん!!」
「うわ、ファジー!向こう向いてクシャミしろよ!お前のクシャミ風圧はパネーんだから」
ファジーのクシャミを間一髪避けたハヤテが睨みをきかせる。
ファジーは叫んだと同時に、随分コショウを吸い込んでしまったらしく、朝からデカイくしゃみを連発していた。
胡椒爆弾の近くにいたハヤテとトワの被害がひどく、トワは蕁麻疹まで出していたようだ。
ナギはバンダナでコショウを避け、難を逃れた。
俺もあの爆弾の事は知っていたからクラバットで防げた。
それにしても――
あの時どさくさに紛れて●●を抱き締めていた事を、ナギには後で注意しなきゃならねー。
コショウを洗い落とし、ぼうっと立っている●●の腕を掴む。
「ちょっとこっちに来い」
「シンさんは、コショウ大丈夫だったんですか?」
●●は、今俺に呼び出されたのがどういう理由か理解もせず、呑気な声をあげる。
「ああ。ロイの卑怯な爆弾は有名だからな。それより・・・」
●●の華奢な身体を見つめる。
「ちゃんと身体は洗ったのか」
「はい。まだ少しムズムズしますけど・・・」
白い肌に、赤く擦れたあとが見える。
「隅々まで、全部洗ったか?耳の穴もか?」
ロイが耳元で囁いていたのを思い出すだけでもイラつく。
「え?はい。ごしごしと洗いましたけど・・・まだコショウっぽいですか?はっ!まさかコショウ臭い?!気にしてたら、またクシャミが出てきそうです・・・」
彼女が赤くなった肌を更に強く擦ろうとする。
「他は・・・アイツにどこを触られたんだ」
俺の中で黒く渦巻く感情が、また首をもたげてくる。
止められそうに、ない。
「へ?どこって・・・」
「言えよ。」
細い手首を掴む。
「い、いたっ・・・」
昨夜、●●がいなくなった時。
他の男の元にいると知った時。
ナギの手が彼女に触れた時。
ロイの吐息が彼女の耳元に触れた時。
コイツの奪い合いに参戦すると宣言された時――
俺は何をしていた?
目の前で俺のモノに手を出すヤツがいたというのに、何も言えずにいた。
そんな隙を与えたことすら腹立たしい。
もうあんな過ちは繰り返さない。
コイツを受け止められる立派な俺になるまで・・・
なんて何を恐れていたのか。
俺らしくもない。
俺は海賊だ。立派もクソもない。
どう足掻いたって生きる世界は違う。
だからこそ、この胸へと引き寄せねーと、掴めない。
「あんな変態に触られてんじゃねーよ」
彼女の顎を引き寄せ、唇を奪う。
「・・・んッ」
俺が勝手に作っていた壁を。
●●は何度もしっぽをふって、泣いて、笑って、命をかけて、超えてきた。
だから今度は・・・俺の番だ。
突然のキスに戸惑う彼女を、抱き締める。
「これで、ロイに触られた事はチャラにしてやる」
「シンさん・・・今の・・・」
欲しいものは汚しても傷つけてでも奪う。
ずっと、そうやって生きてきたはずだった。
世界中のどこを探しても二つとない大事な宝を手にして、投げ出すなんて俺じゃない。
コイツがどうなろうと、俺の側に置く。
手にいれて――そして、
満たしてやる。
「そういうことだ。俺の女になれ」
●●は頬を紅潮させて、呆けた顔で俺を見つめている。
「船長にもドクターにも、ロイにも、ナギにも・・・取られたくねー」
目の前の女の驚いた様子に、思わず本音が漏れる。
「だ・・・だって、シンさん・・・私のこと、女として見てないと思って・・・・」
●●の瞳から、涙が零れた。
滴る涙をそっと唇で掬う。
「女だと思ってなきゃ、こんなことするか」
触れた先から●●の肌は色づいていく。
「・・・っ」
やっと――手に入れた。
一度暴走しだした感情は、完全に満たされるまで抑える術を持たずに。
●●の身体を折れそうなほど抱き締め、長いキスを交わす。
「・・・んん・・・ッ」
深くなるキスに。
次第に●●の身体から力は抜けていき、俺に全てを委ねているのを感じる。
コイツが海賊船にやってきて、同室になった初めての夜。
寝惚けていたコイツのファーストキスを、いたずらに奪ったのは・・・・。
最初からこの言葉を言うためだったのかもしれない。
俺の唇は、彼女の耳たぶに触れ。
押しとどめていた感情が、一気に溢れる。
「愛してる」