Novel

□本編 Shinside
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23.参戦

トワがリカー海賊団に連れられて、2日後。
彼女が精密に書き写した地図のおかげで、無事ポポ島に着いた。
ドクロ島に向かうには、この島で一度燃料補給をしなければならない。
必ずロイは此処にいる――


「資料によれば、島の周りは海とジャングルだけど、中心は歓楽街があって栄えてるらしい」
「さすがドクター。下調べ完璧!…ってアレ、ロイの船だぜ!」
ハヤテが双眼鏡で、島に停泊している黒い帆の船を見つける。

「貸しなっ!」
「ぐえっ!おい、ファジー、いちいち突き飛ばさなくていーだろ。ったく怪力なんだからよ」
船長がファジーに向き直る。
「ファジーはどこにトワがいると思う?」
「多分、船底の隠し部屋だと思います。船長!アタイに助けに行かせてください!」
「いいのか。ファジー」
「はい!船とロイ船長の性格は、よーく知ってます。もちろん、そんなことした裏切り者は二度と船に戻れないけど」
「おい!ファジー!だからお前はもう、俺たちの仲間だって言ってんだろっ」
ハヤテの照れた怒鳴り声に、ファジーは微笑み、どんっとハヤテを突き飛ばす。
「いって!だからいちいち突き飛ばすなっての」
「そーゆーセリフはアタイはシン様に言われてときめきたいんだよっ!アンタみたいな野ザルに言われたってねぇ!」
「だとよ。おいシン、言ってやれよ」
「断る」
「嗚呼。その冷たいトコロがス・テ・キ」

…リカー号への案内役じゃなければ風穴をあけたいところだ。

「よし、お前ら!ジャングルにキャンプを張って夜を待つぞ。まずはトワの救出だ」
船長の言葉に、俺たちは大きく頷いた。





夜中。

既にハヤテとファジーが第一陣としてリカーの船に潜入していた。
二人がトワを救出してリカーの船を出る。
トワの確保が出来次第オレとナギが第二陣として潜入する手はずになっている。
退却の際の援護のためだ。

彼女と船長とドクターはテントで待機。
潜入後の打ち合わせを確認してから、
アイツに大人しくしているように再度伝えようとテントに向かうと…。
彼女の姿はどこにもなかった。

アイツ…!
フラフラと何してるんだ?!

「おい、ナギ。アイツを見なかったか?」

「…いないのか?」
「ああ」
ナギの表情がサッと変わる。

二人でテントを張った周辺を探してみたが、手がかりは見つからない。
ランプが無い事を考えると、どこかへ出かけて、そのまま帰ってこれない状況にあるということか。
「私がついていながら、すまない」
ドクターが頭を下げる。
「仕方ねーよ。さすがにトイレについていくっつーのはセクハラだと言われたからなぁ」
船長がぼりぼりと鼻の頭を掻いた。


あのバカッ。
どれだけ心配かけたら気が済むんだ!
「もしかしたら迷ってるだけかもしれない。」
苛立つ俺に、ナギが話しかけてくる。
「チッ。こんな時に…」

「待て。ココに引きずられたような跡がある」
ドクターが地面を指すと、
森の中に靴の底で擦ったような跡が浜辺に向かってついていた。
「あそこに…ランプがある」
ナギが指差した方向には、●●が落としたであろうランプが落ちていた。
「この方角だと、おそらくちんちくりんの女はロイの船だな。あいつ、手がかりを残すとは、海賊らしく機転がきくようになってきたじゃねえか」
船長が愉快そうに笑った。

「笑いごとじゃありませんよ。機転がきくと言うか攫われ慣れてきたんでしょう。本当に世話がやける…」
俺が不機嫌に言うと、船長は更に笑う。
「がっはっは!そーともいうな!ンな怖い顔するな、シン。大事な恋人が攫われて機嫌悪くなるのもわかるがな!」
「だから恋人なんかじゃ…」
「なら何だ?確か兄妹だったな!それともペットだったか?」
「ええ…ペットです」
「ペットか!そうかそうか!」
船長は上機嫌で頷いた。
チッ…聞いちゃいねえ

「あの変態野郎の船に連れていかれたと思うと虫唾が走る」
ナギが呟く。
「ロイは変態で残忍だ。●●ちゃんが危険な目にあっていないといいんだが」
ドクターの言葉に、ナギと目が合う。
お互い考えていることは同じようだった。

「船長」
二人ともが同時に船長に声を掛ける。
船長は理解した様子で、ひらりと手を振る。
「ああ。行ってこい!お前らの大切なお宝を取り戻しにな!」
トワの確保を待たずに、俺とナギはリカー号へと急いだ。





リカーの船に侵入して、ファジーから訊いていたロイのベッドルームに向かう。

あの変態が彼女を連れ帰ったとしたら、彼女がいるのはそこしかない。
もしロイがアイツに何かしてやがったら。
産まれたことを啼いて後悔するほど痛めつけてやる―――




部屋の前に着くと、ファジー、ハヤテ、トワが、ロイに肩を抱かれた彼女と向かい合っていた。
「俺は寛大な男だ。その見習いのチビは返してやる。代わりに、この女をいただこう」
「な、なんでそいつ?」
ハヤテが不思議そうな声を上げる。

「決まってるだろ。この女を離したくないからだ。ロイ様は気にいったモノはどんな卑怯な手を使っても手に入れる」
ロイの唇が彼女の耳元に近づき、彼女が抵抗しようと身をよじらせる。


「ナメた真似しやがって」
独りでに口から言葉が漏れると、
「ああ。ぶっ殺してやる」
隣のナギも呻く。

「おい、そこの変態」
「何だ?まだ侵入者がいるのか」
シリウスに囲まれ、俺の銃口が向いている状況だというのに、ロイは呑気な声を出した。
そして彼女の肩を抱いた手を離そうとはしない。


「お宝を返してもらいにきた」
「宝の地図か?」
ナギが彼女の腕を引っ張り、ロイから引き離す。
「いや。宝ってのはこっちだ」
「なるほど。一粒の真珠、って訳か。この女を巡って男達が争ってるんだな」
ロイは愉快そうに微笑み、俺とナギを交互に見比べる。

「…」
「…」
「面白い。その争いに俺も参戦しよう。知っての通り、俺は欲しいものは必ず手に入れる男だ」


参戦?
バカを言うな。
この勝負は、とっくに俺が勝っている。

「言いたいのはそれだけか。二度とその口がきけないようにしてやる」
突きつけた銃の引き金に、手をかける。

その瞬間、
「いいか。俺以外に縛られるな」
ロイが●●を見てニヤリと笑った。

「まずい!みんなっ!口と鼻をふさぐんだよっ!」
ファジーが大声を上げる。
これは…ロイの得意の…

衝撃音と共に、辺りが煙に包まれる。
とっさに口と鼻を覆いロイの姿を探したが、目の前には胡椒の煙が立ち込めているだけだった。

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