Novel

□本編 Shinside
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11.砲撃




砲撃が続いている。

これは…威嚇ではなく、攻撃だ。


「俺にしっかりつかまってろ」
船の揺れが激しい。

彼女を抱きしめたまま、暫く様子を見るが、砲撃は勢いを増してきて全く止む気配はない。
このままだとまずいな…


「お前はここにいろ」
「私も行きますっ!」
「バカ言うな」
「絶対!行きます!!」
「ワガママ言うんじゃねーよ。言うとおりにしろ」
甲板は危険だ。
この様子だと戦闘になる可能性もある。
彼女を危険な目に合わせるわけにはいかない。

「だって、人手が足りないですよね?!」

コイツ…

「私にできる事だってあります!足手まといにならないようにします!」
こういう時の彼女の顔は、凛としていて、一歩も引かない。

ったく。
この俺が言い返せないなんて…

「…クソ。いいか。絶対俺から離れるなよ」
甲板には冷たい雨が容赦なく打ちつけていて、容赦なく注がれる砲撃に備えて皆追われていた。

「このままじゃ船がやべえ!」
迎え撃つ砲弾の準備をしながらハヤテが叫ぶ。
「右舷がやられた」
ナギの報告で、かなり緊迫した状況だとわかる。
次に大きな砲弾が撃ち込まれる前に、早く船を旋回させねーと。

相手は一隻じゃないようだ。
波は高く、代わる代わる撃ち込まれる砲撃は止まず…

どぉぉぉぉん

「シンさん!あぶない!!」
舵をとろうとする度、すぐ近くに砲弾が撃ち込まれ、船が大きく揺れる。
嵐雨が舵をとる手を阻む。

「チッ」
進路がうまく変わらない。

クソッ。

「手伝わせてくださいッ!面舵いっぱい!!」
●●も舵を握り、二人で動かす。
船はゆっくり進路を変えた。

一度進路が変わってしまうと、シリウス号に追い付ける船はそうそうない。

「良かった…」
安心した●●に注意する。
「まだ安心できない。嵐で波も高い。状況を把握してからだ。甲板に戻るぞ」



甲板に戻ると、辺り一帯に物が散乱していた。
雨は闇と融け合うように、視界を遮る。
「おい。あぶねーから離れる…」
離れるなと言おうとした瞬間、またも大きな砲撃で船が揺れ、●●の身体は船の外に傾く。
俺はとっさに腕を強く引っ張った。









「…離せ」

俺の身体は●●を引っ張った反動で、船の外に投げ出された。
海に落ちずにいるのは、彼女が、か細い腕で、必死に俺を掴んでいたからだった。


「嫌です!」
「いーから、離せ!!」

このままだと●●まで…

「絶対離しませんッ!!」
「バカやろう!このままじゃお前までおぼれ死ぬぞ!!」
「嫌ですっ」
俺は泳げるし、海に落ちても何とでもなる。
だが、この冷たい海にお前を落とすわけにはいかねーんだよ…

睨みつけるが、●●の手は俺の腕を離そうとしない。
俺が腕を振り払おうとした瞬間。


大きな波の揺れに●●の身体がバランスを失い、船の外に投げ出される。
この冷たい海に、マトモに落ちたら危険だ。

落ちてくる●●の身体を必死で抱きくるみ、全ての衝撃から守るようにしたまま、
俺たちの身体は、凍るほど暗い海に沈んでいった。



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