Novel
□本編 Shinside
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48.伴侶
夜。
船先で星を見上げている、俺の恋人――
「身体が冷えきってるじゃないか」
ふわりと背中から、海風に冷やされた身体を抱きしめた。
「早く部屋に戻らないと風邪ひくぞ」
俺の声は、いつからこんなに穏やかになったのか。
思い出せないほど、もう心の隅々まで●●の存在が染みわたっている。
「うん・・・」
小さく返事をして微笑むが、●●の視線は海を見つめたままだった。
今はもう遠く離れてしまった故郷を想っているのかもしれない。
シリウスがずっと目指していた宝は見つかり、現在はモルドーに向かっている。
だが、そのあとは・・・?
●●を海賊船に引き留める理由は無くなり、船長の許可さえ下りれば、モルドーの後にヤマトに向かうことだって出来る。
理由か・・・。
いや、理由なら出来た。
例えこれから何処へ向かうことになったとしても、俺が●●を手離すつもりはない。
もう手離せる訳が無い――
「部屋に戻るまえに・・・」
俺はティアラを取り出して、●●の頭にのせた。
満天の星空と同じように、静かに厳かに、それは光輝いている。
「これだけは船長に言って、先にもらった。遠い昔、王族が身に着けていたティアラだ。お前が身につけろ」
冷たい頬を暖めるように優しく撫でると、●●は驚いた表情で頭上のティアラに手を添えた。
「でも・・こんな大切なもの・・・」
ティアラに触れた●●の手を、俺はぎゅっと握りしめる。
「モルドーで、オヤジに会ってくれるか?・・・それとオフクロの墓に行って、お前を紹介したい」
握りしめる力が、自然と強くなった。
「俺が、生まれて初めて、惚れた女だって」
あれだけ疎ましく思っていた自分の血と向き合えたのは、コイツと出会えたからだ。
――そして●●を、本気で愛したからだ。
「モルドーに行った後は・・・」
彼女は言いかけて、呑み込むように黙り込む。
「どう、すればいいんでしょう・・・」
「お前はどうしたいと思ってるんだ?」
●●の小さな身体が俺をきつく抱きしめた。
「わたし・・・っ・・・シンさんと離れたくない」
「ばーか。愚問だ。・・・離さねえよ。離してたまるか」
心の奥底からの言葉を、俺は吐き出した。
「お前が故郷に帰ると言ったって、奪ってでもさらっていく」
「ずっと、離さないで。私も生まれて初めて、大好きな人に出会えたから――」
二度と、この腕から離さない。
腕の中のかけがえない宝を、俺はきつく抱きしめた。
物語のラストはもちろんハッピーエンドだ。
ウラルも王城も、海の底に眠ってしまったとしても、
主人公は、生涯愛する伴侶を見つけ、愛し合い――物語は繋がれ続ける。
人が人を信頼し、愛することを止めない限り。
俺が●●を愛し続ける限り、永遠に。