Novel

□本編 Shinside
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44.歌声

「そこまでだ。ロイ」

船長の声に、王座を覗き込んでいたロイは振り向き、驚いた表情を見せた。

「なんだ、お前達。階段でお手て繋いでたんじゃないのか。何でそんなに早く追いついてきてるんだ」

「ロイ様・・・すみません。シリウスが強くて・・・」

縄で縛りあげたトムとコリンがうなだれる。

「まったく情けないヤツらだ。シリウスの連中とトレードしたいな」

「そんなこと言わないでください!ロイ様〜」


船長がトムとコリンに銃を突きつけて、低い声音で言う。

「宝は諦めろ。でないとお前の仲間を・・・」

「ふーん。殺せば?」

ロイが間髪を入れずに返した返事に、トムとコリンが声を上げて泣き出した。

ロイはしばらく玉座を見つめていたがバツが悪そうな顔をしてから、

「あーもー!わかったよ!あきらめりゃいいんだろ!」

開き直って武器を捨てた。



「トワ、アイツを縛れ」

船長の命令でトワが大人しくなったロイを縛りあげる。

「くそっ!!ロイ様は縛る専門だっていうのに」




玉座の傍は、二体の男女の骨と一本の剣が転がっていた。

ウルの王と王妃だろう。

ここで果てたのか・・・。

古い物語を思い出す。

確か母の物語では、ただ一人の勇者が二人の子供を逃がしたことになっていた。

自分たちは守るべきものの為に最期まで戦い、我が子孫にすべての希望を託した――



「シン。その玉座には何て書いてある?」

船長が玉座を指した。

背もたれの中央にネックレスと同じ大きさのくぼみと、文字が刻まれている。


<我が一族の真の宝をもって秘密の扉を開けよ>


「・・・ネックレスを貸してくれ」

彼女からネックレスを受け取り、石をくぼみにはめ込む。

「あれ?何も起こらねーぞ?」

ハヤテが緊張を解いて溜息を漏らした。



「ここに何か書いてあるね」

ドクターが小さく書かれた残りの文字に目をとめた。

「・・・これは・・・ウルの古い子守唄だ」

物語の最後に、眠れない夜に。

オフクロがよく歌ってくれた。



今でも耳に残っている。

温かくて、優しいウタ。



俺は瞳を閉じて、自然と口ずさんでいた。

静まり返った王室に、俺の歌声が響く。


「グスッ・・・何て綺麗な歌声なんだいっ!!あたい・・・涙がっ・・・」

ファジーだけがズルズルと音を出していたが、

ロイも含めて他の皆が、黙って俺の歌に耳を澄ませていた。


ゴゴゴゴゴッ・・・・・・・



俺の歌に反応して王座が動きだし、そこには階下へと続く階段が現れる。


「地下室だ」



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