Novel

□本編 Shinside
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43.仲間

ズキューン ズキューン

俺は吹き抜けの天井・・・
おそらく華麗な装飾が施されていたであろう、シャンデリアの残骸を撃ち抜いた。
静かな城に数発の銃声が響く。

シャンデリアを吊った鎖に銃弾が貫通して切れると同時に割れたシャンデリアは落下し、天井からワイヤーロープが降ってきた。

本当に―――物語通りだ・・・・・。

「ハヤテ。そのロープに掴まれ。十分な強度があるはずだ」

ハヤテは腕を思いっきり伸ばし、ロープを掴む。引っ張って強度を確かめると同時に俺の手を離し、反動をつけてから崩れていない足場へと飛び移る。


「た、助かったな・・・」

ハヤテがほっとした顔で座り込んだ。

それから驚いた表情で、

「何であそこにロープがあるってわかったんだ?!・・・つーか何であんなとこにワイヤーロープが仕掛けられてるんだよ!?」

興奮しながら問いただしてきた。

「まさかシンお前・・・」

「何だよ」

「超能力者だったのか?!」

「・・・・バカだろ」

「バカって何だよ!くそっ。そーゆーかわいくねえ態度だからなぁ・・・!」

「助けてもらってその態度か?可愛げがないのはお前だろ。俺はここを知っていると言っただろう。お前は信じてなかったけどな」

物語の中で、だが・・・・。


母の語り継いでくれた城の姿は、俺の記憶の中で鮮やかに動き始めていた。

扉の場所も、どこに戦闘や脱出のための仕掛けがあったのかも手に取るようにわかる。

ウルの血が、思い出させているようにも思えた。

「けど、マジでシンに見捨てられると思った・・・ソウシさんや船長ならともかく、シンだもんな!あの笑みを見た瞬間、あ〜オレは終わったって覚悟した・・・!手をはなしてくれって自分で言ったの、すげー後悔したんだからな!!」

「・・・やはり見捨てればよかったな」

「つーか。とにかくサンキューな!」

「フン・・・別に、シリウスの掟に従って助けただけだ。」

「相変らず素直じゃねーよな。ま、大事なオレを助けたかったんだろ?よーくわかってるって」

「うるさい。気色の悪いことを言うな。それより船長達を引っ張り上げないと、トワはともかく、ファジーを支えるのはあれ以上キツそうだ」

「だな!」

ハヤテと一緒に船長達の救出に向かうが――

俺たちの目の前に立ちふさがったのはトムとコリンだった。

「シン。こいつら二人くらいオレ一人で全然よゆーだし!船長達を先に助けにいってくれ」

ハヤテが二刀を抜いて構えた。

俺は頷いてその場を離れる。



どう動くか、何が優先なのか。

何を守るか。何処へ向かうのか。

全部を伝えなくても瞬時に理解し合える、身体が動く。

信頼出来て預け合える。

そんな仲間がいるのは、悪くない。


長い航海のなかで、人生のなかで、

どんな宝よりも手に入れ難いものだ。



『仲間は命がけで守る』

初めてシリウスに乗船した日。

ハヤテと取っ組み合いのケンカになり、

鼻で笑っていたはずのシリウスの掟が―――

いつの間にか俺のなかに深く沁みついていた。



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