Novel

□本編 Shinside
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40.遺跡
森の中は自然が残っていた。

長い間誰も訪れないまま静かに時を刻み、
かつてこの島にウルが暮らしていただろうことを豊潤な緑の中に覆い隠そうとしているかのように――


しばらく歩くと、森の中に古い遺跡が見えてきた。

「中に入ろう」

船長の声に、皆が順に細い入口を抜ける。

かび臭い匂いが鼻をつく。


「壁に文字があるな。さっきの岩と同じウルの古代文字か」

ドクターが興味深そうに文字に手を伸ばした。

「ええ。おそらくここは、ウルの王族の城だったようです」

壁に描かれた文字から、高貴な人物が住んでいたことが読み取れる。

文字のそばには、ウルの王家の紋章も彫り込まれていた。




カラン。


「ぎゃーーー!!!ガイコツッ!!!」

ハヤテが突然高い声を上げた。


「情けない男だね!抱きつくんじゃないよっ!ガイコツごときが怖いのかい?」

ファジーが笑いながらハヤテをバシバシと叩き、ハヤテはバツが悪そうにファジーから慌てて離れた。



「ちげーよ!驚いただけだっ!!ったく!おおお、おどろかせやがってっ!」

そう言いながらもガイコツが怖いのか、ハヤテは遠巻きに剣の刺さった白骨に文句を言う。

「だいぶ崩れた骨もある。形が残っている方が少ないな」

ドクターが骨を見つめ、丁寧に手を合わせていた。



「・・・みんなウルの兵士なのか?」

そう言った俺の声は、思ったよりも低く震えていた。

この地で、多くのウルの命が奪われたのか・・・・。



「戦の跡、か。錆びた鎧や剣があちこちに散乱してるな。柄の部分はとっくに腐っちまってるようだが」

船長がさび付いた剣を持ち上げる。

わずかに残った柄の木片が、パラパラとこぼれ落ちた。

ドクロ島には、前人未到の財宝が眠っていると言われている。

人骨と錆びついた武器ばかりのこの遺跡のどこにそれが・・・?


ドクロ島の地図の端には、コック、牢に繋がれる男、冠が描かれている。

目の前の彼女に問いかけてみた。

「キッチン。地下。王室・・・。宝はどこにあると思う?」


たまたま紛れ込んだ海賊船はシリウスで、

氷の島で地図を見つけたのも●●だ。

幾度となくその強運に驚かされ、

船長は●●を幸運の女神だという。

皆が、彼女の言葉を待っていた。



彼女はゆっくりと、ためらいがちに答える。

「・・・王の部屋・・・ですか?」

兵士たちが命を賭して、守り抜くのは王族。

「マジかよ。単純じゃねえ?」

ハヤテが聞き返した。

「二手くらいに別れたほうがいいんでしょうか?」

トワが船長に訊ねる。


「いや。今は固まって動いた方がいい。王室を探そう」

船長の言葉に、全員が頷いた。



「しかし王室はこの城のどこだろう?」

ドクターは地図を眺める。

城についての記載は何もない。

「えらいヤツって大抵上の方にいるから、王室ももっと上じゃねえの?とりあえず登ろうぜ」

ハヤテが言いかけたその時――

「ぎゃああああ!!!ムカデ!!!」

ガイコツにも動じなかったファジーが、人間と思えないほどの叫び声をあげて飛び上がった。

と同時に、物凄い振動が建物を揺らす。

「バカ。お前の巨体で揺らしたら足場がっ・・・・」

ガラガラと大きな音を立てて階段が崩れていく。

階段があった場所には大きな穴が開き、足場を失ったメンバーが下からの冷たい空気にさらされていた。


全員が近くにいたメンバーの手を支え、それぞれに身動きが取れなくなってしまっている。

俺の両手もハヤテの両腕ををつかんでいた。



「いやー。涙が出るねぇ。シリウスの連中のくだらない美しい友情には」

背後から嫌な声が聞こえ―――

視線の先には、リカー海賊団を引き連れたロイが、ニヤけた顔で立っていた。

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