Novel
□本編 Shinside
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39.感覚
ついにドクロ島に着いた。
地球の果ての無人島。
ドクロ島の名にふさわしい、ヒトの頭蓋骨の形のような巨大な岩がみえる。
「みんな気をひきしめてついてこいよ!」
船の見張りにナギを残し、船長の合図と共に皆が一斉に島に上陸しようとしていた。
船の端で、ナギが彼女のオデコをつついたのが目に止まった。
おそらく・・・気をつけろ、とでも言われてるんだろーが・・・。
何だか気に食わない。
そもそもアイツは、ナギに気軽に触らせすぎじゃないのか?!
無骨なナギは女の機嫌を取るタイプじゃないが、ナギに好意を寄せられて嫌な女はいないだろう。
ストレートに好意を告げる態度に絆されて・・・なんてことが・・・無い、はずだよな?
・・・・・・・・・・・・。
じっと見ているとナギと目があう。
チッ。・・・・愉快そうな顔をするな。
今から危険な島に入るってのに、俺の頭の中はお花畑か?
こんなことに気を取られるなんてどうかしている。
「おい。もたもたするな。」
「は、はい!」
俺が声をかけると、慌てて彼女はチョコチョコと俺の後をついてきた。
フン。
最初っからそうしてればいい。
●●がついてくるのを確認して、俺は歩をすすめた。
改めて島の様子を窺う。
意外にもドクロ島は緑豊かな島だった。
・・・・・・・・・・?
この・・・感覚は・・・何だ?
「シンさん?どうしました?」
すぐ近くで●●の声が聞こえ、ようやく我に返る。
「ん?・・ああ。いや、昔来たことがあるような感覚がして・・・」
そう言いかけると、ハヤテがすかさず口をはさむ。
「お前何言ってるんだ?地球の果ての無人島なんだぜ?そんなわけねーだろ」
「だから、感覚だと言ってるんだ。ここと似た場所を知ってるだけかもしれないが」
島の中心には大きな岩が鎮座していた。
「地図によるとココにお宝があるのか?でも、ふつーの岩じゃんこれ。とりあえず衝撃与えてみっか」
ハヤテが剣でドクロ岩を斬ろうとするが・・・。
「待て」
俺は自然と、剣を振り上げるハヤテを制していた。
やはり・・・
この島の記憶がなぜか俺の体に残っている。
誰に教えられるでもなく、岩にこびり付いたコケをはらう。
そこには、ウルの古代文字が書かれていた。
ドクターも注意深く文字を見つめる。
「岩に文字があるようだね。何の文字かな?」
「ウルの古代文字だ」
ウルはモルドーに侵略されて、文字や言葉を奪われた。
現在はモルドーに沿った文字を使用することを決められているが・・・
これは搾取される以前の古代文字。
「よ、読めるのか・・?シン」
ハヤテが剣をしまいながら心配そうに聞いてきた。
「ああ。ガキの頃、オフクロに教わったからな」
「読んでみてくれ」
船長に言われ、俺はその文字を声をあげて読みあげる。
<西から来るものが我が民を滅ぼそうとする。
彼らは王族の血を絶やそうとするだろう>
「たしかモルドーは西からウルを攻めたらしいね。苔が生える程古い石碑だからこれは予言だ。そして正しかったといえる」
ドクターが言葉を続ける。
「・・・ということは、この島に眠っている財宝は、ウルの王族が遺したものなのか?」
ウルの宝・・・
俺は震える手で文字をなぞった。
言葉はまだ続いている。
<王家の血と宝は守らなければならない>
その時、彼女が立っている場所から淡い光が放たれた。
ネックレスだ。
彼女の身に着けたネックレスが、ぼんやりと淡いブルーの光を湛えて輝いている。
「それって、シンの母ちゃんのネックレスだよな?!」
ハヤテが驚いた顔でネックレスを見つめた。
「●●、もっと岩に近づいてみてくれ」
「はい」
●●が近寄ると淡い光はくっきりした光線へと変わり、森を指した。
オヤジの手紙にあった、オフクロの出生の秘密。
そんな・・・・まさか・・・・。
「まさか・・・・俺のオフクロは・・・・」
ふと、ドクターの手が俺の肩におかれた。
「行ってみよう。お前のお母さんの歴史をたどるために」
俺は静かに頷いた。