WTの夢

□忍田さんと命名
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『さて!太刀川隊のみなさん、宿題はやってきましたか?』

パンと手を打った奈月に三人は首を傾げる。

「宿題?」
「何言ってんだ奈月。」
「奈月さん先生みたーい。」
『あの子の名前を考えようっていう宿題だよ!忘れたとは言わせない!』

ビシッと部屋の奥を指差したその先には、健気に隊室を掃除するルンバ。

「え、あれ宿題だったっけ?」
「結局人任せにしようぜってなったろ?」
『なったけど!』
「あ〜、でも任せっきりじゃよくないって宿題にしてましたよね奈月さん。」
『そう!さすが柚宇ちゃん!』

いまいちピンときていない男二人に奈月が問い掛ける。

『で?宿題は?出水くん。』
「スミマセン先生、任務が忙しくて…。」
『そうやって学校でも上辺だけの謝罪をしてる姿が目に浮かぶわ。』
「うるせー師匠。」
『はい、じゃ太刀川さん。』
「宿題なんてやってるわけないだろ?課題なら、」
『え、まさか、』
「もちろんやってないけどな!」
『一瞬でも太刀川さんに期待してしまったオレはバカか…!』

どや顔の太刀川に頭を抱える奈月。
そんな二人をよそに隊室のドアが訪問者を告げる。

「いきなりすまない。少しいいか?」
『ぅえ?忍田さん?』

ノック音の後、顔を出したのは我らが本部長。

『え、どうしたんですか?太刀川さん?課題?』
「いや、慶の課題もだが今日は奈月に話があってな。」
『オレ!?え、何かした!?課題ちゃんと出してるよ!?』
「何もしてないよ。私が来たら課題のチェックなのか?」
『いやぁ、つい…。』

苦笑した忍田さんに笑って誤魔化す奈月。
その背には太刀川が貼り付いている。

『てか何で隠れてんの太刀川さん。』
「条件反射だ。」
『どうでもいいけど邪魔。』
「隊長に向かって邪魔とはなんだ邪魔とは!」
『忍田さん、ここうるさいから廊下で話しましょ。』
「あ、ああ。そうだな。」

忍田の背中を押して廊下に出る。
室内からは太刀川の声とそれを宥める二人の声が聞こえてくるが奈月は知らん顔だ。

『それで、オレに話って何ですか?改まって言われると怖いんですけど。』
「ああ、すまんな。それなんだが……、」
『…は…、』

忍田の口から出た言葉に奈月は固まった。

「この話を聞いた時、正直信じていなかったのだが…。奈月の反応を見ると本当のようだな。」
『っ、黙っていたこと、すみません…。でも、』
「ああ、この話はここだけのものにしよう。…だがどうするつもりだ?力になれることは協力するが…、」
『、ありがとう、ございます…。』

弱々しく俯いた奈月に忍田は戸惑う。
いつもどこか飄々としているだけに、こんな姿を見たのは初めてだった。

「奈月…、」
『、大丈夫ですよ忍田さん。いやー、課題じゃなくてよかった!太刀川さんみたいにしごかれるのは勘弁なんで!』
「…そうか…、」

パッと上がった表情はいつもの奈月のもので、それ以上の干渉は戸惑われた。

『ところで忍田さん。』
「ん、なんだ?」
『ルンバに名前つけるとしたら何がいい?』
「ルンバ?」

気を取り直して奈月に向き合う忍田だが、予想外の言葉にキョトンと首を傾げた。

『お掃除ロボットのルンバ。頑張って隊室掃除してくれるんだよね、もうあの子も隊員だと思うんだよね。なのに名前がないって可哀想じゃない?』
「そうか、そうだな。」

奈月の説明に素直に頷いた忍田。
うーんと首を捻った後、真面目に人さし指を立てた。

「ルンちゃん、と言うのはどうだろう。」
『ル、ルン、ちゃん…?』
「安易だが、呼びやすいし愛嬌があっていいだろう?」
『…っ!』

両手で口元を覆った奈月。

『忍田さんの口から素敵な名前を頂きましたぁ!』

感極まった奈月の大声に、隊室の面々が驚いて顔を出す。

「ちょっと師匠うるさ…って何で忍田さんに抱き着いてんの!?」
「奈月…お前強者だな…。」
「奈月さんやる〜。」
『ルンバの名前はルンちゃんにけってーい!』
「気に入って貰えたのなら嬉しいよ。」

戸惑う三人と、顔を見合わせ喜ぶ二人。
何はともあれ太刀川隊のルンバに“ルンちゃん”という可愛い名前がついたのだった。





END.
(名前応募してくれた方ありがとー!)(ルンちゃん大切にするね〜。)

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