WTの夢

□出水と師弟
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「師匠〜、ちょっといい?」
『んー、よくない。』
「なんで!」
『眠い。』

机に突っ伏した奈月の肩をゆさゆさ揺する出水は、奈月の唯一の弟子だ。

「可愛い弟子が困ってんだろ!寝るな!」
『んん〜?どこに可愛い弟子がいるって?』
「こっのバカ師匠!人でなし!オフェンス馬鹿!」

いくら妨害しても突っ伏した顔を上げない奈月に、出水は諦めたようにため息を吐いた。

『んで?』
「何だよバカ師匠。」
『何に困ってるわけ?』
「っ、……合成弾が、うまくいかないんだ。」

相変わらず机に伏せたままだが、奈月からはしっかり返事が戻ってくる。

『合成弾?お前の得意分野だろ?』
「そーなんだけど… なんつーか、作るのに時間がかかるようになっちまって…。」
『前は二秒だったか?今は?』
「三秒。」
『贅沢な悩みだなおい。』

思わずと言ったように奈月が顔を上げる。

「でも一秒だって大事だぜ?」
『分かってるよ。とりあえずやってみ。』

トレーニングルームに入り換装した出水は、練習通りにトマホークを作ってみせた。

「…やっぱり三秒。」
『だなぁ。じゃあ今度はオレの見てな。』

そう言った奈月は換装すると、出水と同じくトマホークを作った。

「早!」
『何が違った?』
「いや、違いもなにも根本的に違いすぎて分かんねーよ!」
『それでもオレの弟子か。』
「悪かったな!」
『ほれ、もう一回やってみ。』
「っ、」

悔しそうに唇を噛んだ出水は、もう一度トマホークを作ろうとメテオラとバイパーを出す。

『はいストップ。』
「え!この時点でアウト!?」
『お前のトリオンキューブ、綺麗な立方体だなぁ。』
「え、あ、うん?」
『でもこれが原因だ。』
「…分かんないんだけど。」

眉を寄せた出水に、両掌を見せる奈月。

『これ、なーんだ。』
「え、……餅?」
『正解。じゃあこっちは?』
「んんん?んー、うどん、か?」
『ピンポーン。じゃあ、これは?』
「!太刀川さん!」
『大正解。ってこった。』
「……は?まったく意味わかんねぇ。」

右手に餅の形をしたメテオラ、左手にうどんの形をしたバイパー、合成したら太刀川の顔を型どったトマホークが完成だ。

「つーかそれ気持ち悪いんだけど。」
『太刀川さんカワイソー。…とまぁ要するに、型に囚われすぎんなってこと。』

適当に軌道を引いて太刀川の顔を飛ばす。
壁に当たって爆発したそれに出水は微妙な表情を浮かべた。

「でもそれってあり?」
『二宮さんは四角錐や三角錐だし、加古さんは球体だ。真面目にきっちりやるのもいいけどなぁ、たまには力抜いて遊んでみ。』

換装を解いた奈月はぐっと伸びをしてあくびを漏らす。

「…つまり、きっちり作りすぎんのが逆効果、ってことか…。でもだからって極端に形変えんのはよくない、気がするし…そもそもそんなんで解消するのか?やばい、明日の防衛任務大丈夫かこれ。」

思考が負の連鎖に陥った出水にため息を吐いた奈月は、ポン、と考えすぎる頭に手を置いた。

『自信持て、公平。お前は出来るよ。オレの自慢の弟子だ、大丈夫。』
「――っはい、師匠。」

憑き物が落ちた様な出水の返事に、満足気に笑った奈月はトレーニングルームを出る。
そんな後ろ姿を見て、出水はじわじわと緩む頬を必死で抑えた。

「…師匠ってズルイよな。」
『そりゃどーも。』





END.
(メテオラをゲーム、バイパーを甘い物…トマホークで…ってこれスゲーむずい!)

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