WTの夢

□迅と熱
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熱にうなされて目を開けると、ベッドサイドに座る存在に気付く。

「あ、起きた?」
『…迅、』

合鍵を持っている迅だ。

『何してんの…?』
「奈月が寝込んでるのが視えたから。」

迅が持つ袋には薬やスポーツドリンクが入っている。

「はい、おでこ出して〜。」
『ん…。』

袋から出した冷えピタを前髪を上げた奈月のおでこに貼る。

「何か食べた?」
『…食べてない。』
「じゃあ食べて薬飲も。」
『えー、食欲ない…。』
「そう言うと思ってレイジさんにお粥作ってもらったよ。」
『………なら食べる。』

木崎の料理が好きな奈月は、ゆっくりと上体を起こす。

「温めてくるから熱測って待ってな。」
『んー…。』

熱でボーっとする奈月の頭を撫でた迅はキッチンへと向かい、のろのろと脇に差した体温計が鳴る頃に再びお粥を持って戻ってくる。

「どう?熱は?」
『38度5分…。』
「結構あるね…。」

お粥の入った器を手渡した迅は、奈月の言葉に眉を寄せる。

『…おいしい、んだろうけど…。』
「味しない?」
『ん…。元気な時に食べたい…。』
「それ意味ないから。」

よそった分を全部食べた奈月は、薬を飲んで横になる。

『はぁ…ダルい…。』
「半崎みたいだな。」
『ホントだ…。』

奈月の髪を優しく梳く迅は、そういえば、と思い出したように手を止めた。

「この前太刀川さんにチューされたでしょ。」
『…何で知ってるんだ。』
「実力派エリートですから。」
『…視えてたんなら教えてよ。』

ドヤ顔で言う迅にため息を溢すが、吐いた息が熱くて、ああ、と奈月は納得する。

『そうか、だから風邪ひいたんか…。』
「ん?」
『太刀川菌をもらっちゃったんだよ。』

腕で目を覆った奈月に一瞬キョトンとした迅だったが、次にはクスクス笑いを溢す。

「そりゃあ手強そうだ。」

止まっていた手が再び動いて、奈月の頬をするりと撫でた。

「じゃあ、」
『?』
「消毒。」
『ん、』

唇に触れた柔らかい感触に思わず目を開ける。

「太刀川菌貰ってあげたから、大丈夫。」

いつも通りに笑う迅に何も言えず、口を閉ざす。

「ほら、もう少し寝な?」
『…おー…。』





END.
(太刀川さんとチューしたかったんかな…。)

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