WTの夢
□冬島さんとメンテナンス
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『冬島さーん、メンテお願いします。』
「おー奈月、調子どうだ?」
冬島隊の作戦室に足を運んだ奈月は、そこの隊長にトリガーを渡した。
『この前の防衛任務で思ってた以上の威力が出ちゃって。』
「…そりゃお前、またトリオンが増えたんじゃねーか?」
『マジで。』
「早いうちにトリオン検査してもらえよ。」
『えー、鬼怒田さんうるさいからヤです。』
口を尖らせる奈月に苦笑を返した冬島は、預かったトリガーを弄り始める。
「お前のトリガーは遠近中距離全部入ってるからなぁ。トリオンバランス考えねぇと使いモンならなくなるぞ。」
『うん、だから冬島さんにお願いしてるんです。』
「そりゃ嬉しいが、ランク戦の時にゃ手の内モロバレだぜ?」
『いいハンデじゃないすか。』
「言うねぇ!」
奈月の悪態にニヤリと笑った冬島は、トリガーのチップを微調整する。
「一応聞くが、シールド入れるか?」
『いらない。』
「だよな。」
奈月は自他共に認めるオフェンス馬鹿だ。
防御?ナニソレおいしいの?状態である。
『本当はバックワームもいらないんだけどね。』
「東が泣くぞ。」
『うん、頼むからバックワームは入れてくれって言われた。』
当時を思い出した奈月は苦い顔をして頬をかいた。
「おし、トリガーは終了。増えた分トリオン調整できるようにちょいと弄ったぞ。」
『ありがとーございます。』
「そっちはどうする?」
『そっち?』
トリガーを受け取ると同時に掛けられた言葉に首を傾げる奈月。
「コレだよコレ。」
『ああ。』
冬島が指で作ったメガネの形に、話を理解する。
『じゃあついでにお願いします。』
「調子は?」
『特に悪くはないけど、強いて言うならヒンジが弛いかな。』
そう言って掛けているメガネを冬島に渡した時。
『あ、冬島さん今日赤パン履いてる。』
奈月のサイドエフェクトで見えた冬島の下着。
「おい!勝手に見んな!」
『メガネないと制御出来ないですもん。』
「ならせめて黙っとけ!」
『冬島さん、今日勝負しに行くんですか?』
「黙っとけっつーのっ!」
『いてっ。』
奈月にチョップをかました冬島は、ブツブツ文句を垂れながらメガネのヒンジを締めていく。
『冬島さん。』
「ああ?」
『いつもありがとうございます。』
「…急にどうした。」
『いやぁ、助かってるんで、すごく。もうソレなしじゃ生きていけなかったです。』
「…そーかよ。」
作業の手を止めることなくヒンジを締め終わった冬島は、顔を上げて奈月を見る。
軽い調子で礼を述べた奈月だが、そのサイドエフェクトのせいで苦労してきたのだ。
「いつでもメンテしてやるよ。」
『へへ、ありがとーございます。あ!お礼にすき焼きしましょう!材料買ってきます!』
「おい!メガネ置いてくな!」
END.
(あ、でも冬島さん、今日勝負デーなんでしたっけ。)(いい加減赤パンから離れろ!)