高家の戦闘員
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騒がしい船の中は今静寂に包まれていた。
その船の副船長室ではなく、船尾に槍花はいた。
膝に顔を埋め俯く。
パサっと肩に何かをかけられ顔を上げればタバコの煙を吐き出すベックマンが隣に酒を持って座っていた。
「ベンさん宴は?」
「元々船番だ。それより体が冷えて風邪ひいたらどうする。上着ぐらい羽織っていけ」
「ごめん」
ベックマンは優しく槍花の頭をなでる。
がその瞬間槍花は手を払いのけた。
が思わず泣きそうな顔になる槍花にベックマンは少し苦笑する。
「ごっ、ごめん…………なさい」
「嫌だったか」
「違う!そうじゃない…………」
「なんで払いのけられたやつより払い除けたお前が泣きそうなんだ」
「だって…………どうしていいか分かんない……」
かけられた毛布で自分を隠し俯く。
そんな槍花にベックマンは槍花を抱き上げ自分の膝の上に横向けに座らせた。
「ベンさんっ」
「俺はよく女のことは分からん。女といったらお頭が引き連れてくる厄介絡みの奴ばっかりだったからな」
「……厄介絡み」
「女の嫉妬って奴だ。けど、お前らふたりはそんな女じゃなかった。お頭も俺もこの船に乗ってるやつはお前らを守りたいと思ったんだ」
「爽華は守られる存在」
「俺からしたらお前も守られる存在だな」
「…………」
俯く槍花をベックマンは自分の胸に引き寄せた。
「難しい事はあとにしてもう寝ろ。明日お頭に付き合うんだから中途半端に回復したら潰されるぞ」
「…………ありがとう」
槍花はそう言って眠りについた。
「…………俺は自分で何してんだ」
そう言って顔を赤らめながら必死に理性を保とうと後悔するのはそんなに遅くなかった。