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まだ陽の高い昼間。閑静な住宅街の一角。血を流しながら裸足で走る。後ろをやたら気にしながら。だが角を曲がった直後、目の前に現れたなにかにぶつかり、しかもそれが人でありその勢いのまま相手を押し倒す形で共倒れとなってしまった。

「っ!」
「……なんやの?」

声のトーンでその相手は女性だということが分かる。だが山内瀬奈はそれどころではなかった。後ろから走ってくる足音が聞こえてきたからだ。

「あんた裸足やん!ってか顔とか全身怪我してんで!?」
「あっ……や………」

慌てて立ち上がり逃げようとするが、背後からの影に足がすくみ心拍数が上がる。心配そうに顔を覗かせてくる女性は自分と同じ高校生ぐらいでは無いだろうか。

「うちの娘がすみません」

善人の笑顔でその女性に声をかけるこの男。瀬奈の手を取り立ち上がらせると女性も自分の服を叩きながら立ち上がった。やはり同じ高校生のようでふわりと広がるスカートにブレザーを身にまとっていた。

「あんた、父親なん?」
「えぇ、親子喧嘩をしてしまって靴も履かずに飛び出してしまって心配で追いかけてきたんです。さぁ、帰ろうか。瀬奈」

笑顔を裏にある無言の圧力。瀬奈はその手を引かれるがまま背中を向ける。逃げ出して、捕まった。次はもう太陽を拝むことは出来ないかもしれない。

「ちょいまちーや、おっさん」

腕を引かれ男と離れた手は宙を舞い、体はその女性の中にすっぽり収まる。風になびく髪は耳元が灰色で左耳には5つのシルバーアクセサリーが光る。

「なにかな?」
「自分の娘がぶつかった相手に対して謝罪もなく、ましてや自分の説明だけ?」
「謝罪はしましたが」
「すんませんで済むなら警察いらんねん」
「慰謝料をよこせと?」
「とりあえず拉致監禁罪に傷害罪やな」

男は少し笑みを崩す。その崩れた表情を嘲笑うかのように笑みを浮かべる。

「あなた」
「試合会場に全然つかへんから困っとったけど、これはえぇ運動になるわ〜」

瀬奈を地面に座らせ長い袋を持たせるとそこから竹刀を取り出す。体良く竹刀を構えると男は溜息をつきながら包丁を背中から取り出す。怯える瀬奈に対しその女性は嬉しそうに唇を舐めた。

「調子に乗るなよ、クソガキが」
「絶好調ですんませんねぇ〜」
「てめぇから嬲り殺してやるよ!!」

男が包丁を突き出して女性に向かって走っていく。がそのまま包丁を持つ手を掴むと反対の手の甲で顔面を当てた。

「えっ、」
「なんやねん、せっかく竹刀出して楽しめそうかと思ったのにまさかの突っ込んでくるだけって」

さもガッカリしたように男から包丁を抜き取り手際よく服を中途半端に脱がして手を後ろにして縛り上げる。

「あなた、一体」
「うち青空。あんたここの場所説明できる?」
「いえ、ここがどこか……」
「マジかー、ほんならおっさんに喋らすしかないなぁ」
「え?」
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