正義感溢れる野良猫と

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転校してきてはや1週間。

遥人の事があり、遅刻やら早退やらを繰り返し。ようやくまともに登校してきた颯は既に黒尾以外とは距離を置かれていた。

「今日は大丈夫なのか?」
「今日はご機嫌やった。ってことで復習がてら教えてー」

昼休み時間にバレーの練習をする事を条件に勉強を教えてもらう。
「ギブアンドテイク、それが常識やろ」
という颯の一言でそれならばと言う話になった。

「ってかうちでええの?練習」
「今、1年だからってボール触らせて貰えねぇし」
「バレー馬鹿野郎やな」
「まぁ否定はしない」

レシーブ、トス、軽いアタックのラリーを制服で続ける。

「なんで大阪から東京に来たわけ?」
「母親の友達がこっちにおるから、幼なじみってやつ?」
「それでマンション住んでんのか、家賃は?」
「そんなんうちのお金に決まってるやん」
「遥人いるからバイトしてねぇじゃん」
「あれ?言うてへんかった?」

ボールを受け止めると黒尾に近づきながら携帯を触る。172ある颯の後ろから183の黒尾が覗き込む。手の中の携帯の画面には今流行りの有名動画サイトの投稿画面。そこのアイコンの名前がクロと書かれていた。
素性不明なCMソングライターとして有名である。

「え?」
「これうち」
「いや、関西弁」
「歌やし」

思わぬ収入源に黒尾は驚きを隠せない。

「あれ?でも目の色」

素性は隠しているもののいつも帽子を被り右が碧眼で左は深緑が印象的なオッドアイなのだ。

「あれは右目だけカラコン。金髪って言うたら碧眼やろ?」

両目深緑の颯。単純な理由に黒尾はため息をつく。
なんせ身近に有名人がいたのだ。

「美女!」
「「ん?」」

近場の声にお互いに携帯から声のした方へ向く。

「夜っ久ンと海」
「やっクンとかい?なんで急に疑問形?」
「ちげーよ、バレー部」
「おぉ!初めまして、小柳颯です」
「俺3組の夜久衛輔です」
「5組の海信行です」
「夜久くんと海くん!なるほど…大変ですね」

颯は2人を見たあと海の手を握り同情する。まぁ確かに夜久と黒尾はいつでもぶつかり合ってはいるが、それを一瞬で見抜き同情するのもどうかと思う。

「小柳さんは元バレーボーラーなの?」
「ぶぶー、ビーチバレーやで」
「ビーチバレー!?スゲーな!」

と、手にしていた携帯が鳴る。

「あちゃー、ちょっとごめん」
「遥人か、先生に言っとく」
「助かる!ほなまた明日な!」

そういうとボールを黒尾に投げて電話に出ながら走り去ってった。

「可愛い」
「あれあれあれー?夜っ久ンてば惚れちゃいましたー?」
「そんなんじゃねぇよ!」
「まぁみんな噂してるだけあって美人だよね」
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