引き合う二人

□雨は何かを運んでくる
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ザー

最近の天気は荒れ果てていて夕方に降り出す突然の豪雨に太刀打ち出来ない。
土方緋草もその一人で、制服と髪から雨水を滴らせながら平然と歩いていた。

「たらったら〜た〜たった〜♪」

豪雨により声は響かないことをいいことに自分の中で大音量で歌っていた。

「うわぁダメだなこれ」

道の行き当たりに立つ病院から白衣の男が顔を出した。
緋草はその姿を見ると満面の笑みで手を振りながら走り出す。

「やっくーん!!」
「んあ?」

声が届いたのかそれともかすかな声に反応しただけなのかは不明だが、緋草を見た瞬間顔を引きつらせた。

「ゲッ!」
「やっくん!お疲れ〜診察終わり?」
「あぁ今終わっ…って何ナチュラルに会話してんだよ!」
「え?」

病院内に連れ込まれると待合室に緋草を残し足早に中に姿を消す。すぐに姿を表し、手に持ったタオルを緋草の髪にわしゃわしゃと拭き始めた。

「やー頭ゆれるー」
「お前なんで傘持ってねぇの!?」
「んー……どっか行った〜」
「バカっ!」
「ひどいっ!」
「お前ほんとに自分の体理解してねぇだろ!」
「おっ、ちょっとお医者様の知識出来たからってぇ〜」
「ここの医院長でありお前の主治医だよ!」
「やーめーてーゆーれーるー」

この緋草の頭をガシガシと拭くこの男。
近藤弥雲(ヤクモ)といいこの近藤診療所の医院長。だが独身で35歳の弥雲は顔がいい為、この病院には多くの女性が足を運んでいた。

「ぷふぁ!ってかやっくんにお土産あるんだけどさ!」
「あぁ、雨やんだな」
「……聞いてない」
「お前先にお風呂入って体温めろ。夜になったら家に行くから」
「はーい」

タオルを頭にかけたまま外へ出る。
さっきとはうって代わりの快晴。

「あとでねぇー」
「おぉ、ってか起きとけよ!」
「はーい」

走っていき見えなくなると弥雲は中に入る。
とりあえず、診察時間を早めに終了したため待合室の清掃を開始しようとアルコールと布巾を手に持った。
扉が開き先ほど駆けて行った緋草が顔を出す。

「やっくん!!」
「はえーよ!!さっき別れたろ!?」
「銃刀法違反SMプレーイケメン長身男子が家の前にいた!」
「はい?」

緋草の言葉に弥雲は眉間にシワを寄せた。
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