Mikagura

□となりのあいつ。 遊アス
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ー思えば俺は、その時からあいつが好きだった。


ー となりのあいつ。ー


「き、今日からお世話になります、射水アスヒといいます!よろしくお願いします!」

そこまで一息に言って、そいつは勢いよく頭を下げる。

「いやいや、そんな畏まらなくていいから!俺は赤間遊兎。こちらこそよろしくな!

…どうしてこうなった。

親しみやすい先輩、という感じになるように挨拶しつつ、俺は内心でそんなことを考えていた。

俺が籍を置いているここ、私立ミカグラ学園は全寮制の学校で、まあ条件はあるものの生徒全員にそれぞれ寮の部屋が割り振られる。

だから、普通に考えればこんな事態にはならなかったのだ。

そう、普通ならば。

この学園は中等部から高等部に持ち上がりで入ってくる生徒が結構な数いるのだけれど、高等部からの受験も可だ。

今年は受験者が多かったとかで早々に部屋が埋まってしまい、忙しくて手続きをしそこねたこいつ、射水アスヒは持ち上がり組にも関わらず、行き場がなくなってしまったらしい。

そこで、学園側は苦肉の策として比較的広い一人部屋を無理矢理二人部屋にしてしまうことにしたとか。

その被害者が俺である。

全く、この学校は変なところで詰めが甘い。

「ほら、そんなことはいいからさ、片付けやっちゃおうぜ!手伝うからさ。」
ネガティブ思考を打ち払うように手を叩いて、いつもの笑顔になる。

「あ、はい!」

ありがとうございます、と嬉しそうに笑うこいつに笑い返しながら、俺の心情は複雑だった。

…なんで、よりによってこいつが。

記憶の奥、でもはっきり思い出せるトラウマが頭を過って、俺は小さく舌打ちをした。

天文部所属、一年生の射水アスヒ。

別にこいつのせいではないけれど、あまり親しくなりすぎないようにしよう。

だって、一年我慢すればいいだけだし。

"あいつ"にそっくりなアスヒとの生活は、きっときついだろうけど…。

そう考えながら、俺は段ボール箱を処理し始めた。

桜もほころぶ四月の始め、新しい生活は始まったばかりだ。
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