流れる銀のストーリー (MAIN) VOL1


□ムザンにも、美しく変わり果てた君に
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静かな吐息






カランから勢いよく透明な水が流れ落ちる

シンクに、めちゃくちゃに投げ込まれ,
時間の経た使用済の食器を勢いよく洗う、
洗濯機はもう、二回も動かしているが、
汚れたボックスシーツをまだ残したままだ、

独り暮らしで、家事も手馴れたものだと、
公彦は、自分自身に感心している
秀史郎は、よくもこんなにめちゃくちゃな、
薬をする気になったものだと思う

蛍光色の小さな紙袋らをくちゃくちゃに切り裂いて、忌々しそうに、捨て去りながら、
去年までの彼を、思い起こす・・・(まだ、男を知る前の、・・)

そして、公彦は、ベットに横たわる、
青年の顔面を、愛し気に覗き込む

公彦の精神に、今までないほどの欲情と揺らめくような興奮を起こした、生き物(ほんの数日まで、親友とゆうカテゴリーにあったのに)
を上部から覗き込むこむ

今は、静かな吐息、眠る彼・・首筋のおぞましくも、官能的な指痕
その痣に公彦は男にしては、華奢な指を、そっと重ね合わせる
それは、幾分の狂いもなくぴたりと当てはまる

公彦は萌え、震えあがる、恍惚感に、酔う
、昨夜なにのまるで、遠い過去のように思われる、
いや、この恍惚は過去とシンクロしているのだ

時計は、昼の三時を回っている

夏用の薄い羽毛布団を、書け直してやる
アッシュカラーのセミショートに伸びた柔らかな髪を、優しく指で撫でる、

また、自らの子供時代の強烈に、甘美な思い出と重なってやって来る
ああっ・・あのちいさな仔猫も、毛並みがこんなに、柔らかく、生きている暖かさが、そこにあった。

もっとも、次の瞬間、公彦の力を入れた指で、
仔猫のすべてが、終焉を迎えた

残されたのは、公彦の幼い恍惚・・・

そっと、秀史郎の左腕の、鬱血痕・・
自分の失敗した点滴投与で飾られている
愛おしげに唇を軽く押し当てた
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