妄想小咄

□スティグマ
2ページ/4ページ

どうしてこんな気持ち――

【紫蘭side】

「ん…蘭…紫蘭!!」

「な、なんだ騒々しい」

「なんだじゃないですよ。幾ら呼んでも気付かずぼーっとしているから大きな声を出したのです。」

ここは私達監督生の寮。
私は考え事をしていて竜胆の声に全く気付けなかった。

「で、なんじゃ?」

「大丈夫ですか?具合が悪そうですよ」

「大丈夫じゃ。竜胆は心配そうにこちらを覗き込む。

「なんでもないと言っておろう!」

つい声を荒げてしまった。

「そうですか。ごめんなさいね」

竜胆はそう言いながら部屋を出て行った
はあ。私はなにをしているんだろうか
竜胆に八つ当たりをして…
最近私の頭の中から離れない人物。
それは親方様…いや、ファルスである

「なんであんな奴…」

私は一人になった部屋でぼそりと呟く
このまま一人で部屋にいると苛々してしまいそうだったので私は部屋を出た

広場に出るとリリーとチェリー、キャメリアが騒いでいた。
なんでも誰かがいなくなったとか。
よくよく耳を澄ましてみると『シルベチカ』の話だった。
やばい。止めなくては。何故あの子だけが『シルベチカ』のことを覚えているのだ…?!

そう思い口を開こう
としたとき、私の口を何かが塞いだ

「紫蘭。ありがとう、ここは僕に任せて」

私を後ろから抱き締めながら口を手で覆い、耳元で囁いた声の主は私の頭を支配している
ファルスその人だった。

「ああああ、貧血があああ」

わざとらしくそう叫びながら三人の前に倒れこむファルス。

「ファルス?!大丈夫かい?」

「なんであんたまで女子寮にいるのよ!!」

「そんなことより君、医務室まで運んでくれないかい?」

「え?私が?」

「おいこらファルス!聞いてんの?!」

「だめだよファルス、リリーは僕たちと話しているんだ」

「さ、早く医務室へ」

そう言いながらリリーに腕を回し颯爽と広場を出ていく二人。
なるほど、そういうことか

「なんだあいつは…私のときめいてしまった感情を返せ」

私は呟き、何事もなかったかのように広場に出る

「キャメリア、貴様は男子寮の監督生であろう?こんなところで油を売っててよいのか?」

「そーよそーよ!帰れーー!」

「煩いなあ全く。君はもう少しレディというものを学んだ方がいいんじゃないか?おちびさん?」

「むっきー!誰がチビよ誰が!!」

「そこまで!キャメリアは早く男子寮に帰るのじ
ゃ。チェリー、貴様は確かにレディを学んだ方がいいかもしれんのう。」

「なによ皆してー!」

キャメリアとチェリーは、リリーとファルスのことなどすっかり忘れたように騒いでいた
私もその輪にいるというのに、なんだこの心にぽっかりと空いた穴は
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ