妄想小咄
□Take a chance
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撮影は無事終わった。
くどぅーとうちは結構至近距離のポージングが多くてうちの心臓は終始うるさく跳ねていた。
だってさ?くどぅーにあんな至近距離で見つめられてたまに微笑みかけられたりしたら仕方なくない?!
きっとくどぅーに自覚はないんだろうけど。
勘違いしそうになる。
『あゆみん好きだよ』
そんな風に笑いかけるくどぅー。同期愛だと分かっていてもどきっとしてしまう。
こんな風にくどぅーを見てしまううちは、おかしくなってしまったのだろうか。
皆がぞろぞろ帰っていくなか、楽屋にはうちとはるなんだけがまだ残っていた。
「…あゆみんさあ」
おもむろにはるなんが口を開く
「んー?」
うちは帰り支度を進めながらはるなんの次の言葉を待つ
その時楽屋に響いていたはずのうちの荷物の音以外がぴたっと止まった。
どうしたのかと思いうちははるなんを振り返る。
はるなんは大きな瞳でじっとうちを見てる。
「正直に答えてね?………くどぅのこと好きでしょ?」
「え?!」
少し間をあけてはるなんはうちから目を逸らさないまま聞いてくる
いきなりすぎるし図星だしでうちは真っ赤になってしまった。
「そ、そんなわけないじゃん!!」
「正直に、って言ったよね?私に隠し事が通用すると思う?」
そうだった。はるなんは何でもお見通しなのだ。いつもは触れずにいてくれるだけで。
「…ごめん、変だよね、うち。くどぅーは同性なのに。」
「責めたいつもりじゃないよ。わっかりやすい態度なのになかなか気づかない鈍感くどぅと、
なかなか本音を言わないあゆみんに限界が来ただけ」
はるなんはそう言いながら「ふふっ」と笑った。
うちは、この気持ちを肯定してもらえた気がして、今まで堪えていた分の涙が溢れてきた
「だっ、て、嫌われたくない、もん。ほんとのこと言って、くどぅーに嫌われたり、引かれたりしたらうち、っ」
嗚咽を交えながら話すうちをはるなんは優しく見つめて頭を撫でてくれた。
「落ち着いた?」
しばらくして落ち着いたうちにお茶を差し出しながらはるなんは尋ねてきた。
「うん、ごめんね」
「謝ることじゃないよ。辛かったね。孤独じゃつらいのにそうやって自分に苦し紛れの言い訳するの、疲れたでしょ?」
「うん…」
はるなんの言葉にまた涙腺が緩む。はるなんのこういうときの言葉は優しすぎて刺さる。
「一回さ、全身でぶつかってごらんよ。あゆみんが本気でぶつかればくどぅだって分かってくれるだろうしちゃんと考えてくれると思うよ?
伝わらない愛なんてないんだから。」
「そう、かな…?」
「そうだよ!ほら笑って!笑顔のあゆみんは可愛いんだからもっと自信もって!大丈夫だよ」
「そうだよね…ぶつからずにくよくよしてるより当たって砕けろ!だよね!」
「そうだよ!」
はるなんに話してすっきりしたうちは決意した。
「よし!うち、くどぅーに全身でぶつかってみる!」
「そうそう、その意気だよ!頑張ってね!」
そのあとはるなんと少し喋っていたらマネージャーさんがそろそろ帰りなさいと言ってきたので、
はるなんに別れを告げて帰宅した。