妄想小咄
□Take a chance
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今日は新曲MVの撮影。
うちはくどぅーと一緒のシーンがあって待機中。楽屋には二人。
最近何故かくどぅーを意識してしまって変な沈黙が部屋を埋める。
「なあ」
「なっ、に?」
くどぅーが発した一言に大袈裟にびびって声が裏返った。
「ははっ、あゆみんどうしたの、そんなにびっくりして」
くどぅーは笑いながら言った。
「なんでもないよ、それよりどうしたの?」
「いやー暇だなあって。あゆみん全然喋んないし。」
そりゃそうですよ!!なんか同期なのに緊張してますもん!!
「別に話題もなかったし」
「そんな寂しいこと言うなよなー。ハルとあゆみんの仲だろー?」
そう言って彼女はうちをからかう。
仲ってどんな仲なのよ。
うちとくどぅーじゃ多分『仲』の意味、違うんだろうな。
うちはもっと違う『仲』になりたいの。
「仲ってなによ仲って。」
「ひっどいなー。あゆみん機嫌悪いの?」
そう言いながら後ろから抱き締めてくるくどぅー。
ああ、ずるい。そういうことされたら心臓が跳ね上がってしまう。ゼロ距離のくどぅーに心臓の音、気づかれませんように。
「別に。普通だよ」
「普通じゃないだろ。…てかなんか顔赤くない?熱で
もある?」
うちの顔を覗きこみながらくどぅーは心配そうな顔をする。
「ちょ、近い!!」
そう、うちらの顔の距離はあと数センチで届く程の近さだった。
「ああ、ごめんごめん。癖でつい、ね」
そう言いながら少し距離を取ってくれるくどぅー。
癖。そうだ。こいつはそういう奴だった。誰にでも優しいんだった。
「癖ね。ほんとチャラいよね、くどぅーは」
「チャラくねーし」
そんなやり取りが続いている時、はるなんが楽屋に入ってきた。
「イチャついてるとこ悪いけど次二人だってー。今生田さんと譜久村さんが撮ってるけどもう終わりそうだよー」
おっとりとした口調で割り込んできたはるなん。うちらはやばいやばい!って二人揃って楽屋を出た。