そんなよくある話です。

□第3話
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「じゃ、これで」
「あぁ、ご苦労だったな」
「って、待て待て待て!」

引き留めたのは風紀の諜報員、猿飛先輩だ。何だよ、なんで引き留めたんだよ。いや、理由は分かってるけどさ。もうほっといてくれよ。

「どうした」

俺ではなく、幼馴染みが不思議そうに猿飛先輩に返す。お前スゲェな!もうちょっと周りの空気察しようぜ。

「え、君、生徒会庶務の音松くんだよね?」
「間違いなく音松鈴斗だな」
「ソーデスネ」

もうやだ、何この空気。超帰りたい。こんなんだったら話し合い参加した方がマシだったかも。この空気で平然としている幼馴染みが羨ましい。

「音松くんって基本無口無表情のクールな子じゃなかったけ?」
「コイツがクール?ハッ、寝言は寝て言え」

畜生、アイツ鼻で笑いやがった。どこまでも俺がクールって全然信じやしねぇ。まぁ、仕方ないと言えば仕方ないか。

「というか、なんでさっきから石田の旦那が答えるのさ」
「何故だと?決まっているだろう、私とすずは幼馴染みだからだ」
「答えになってないよ、みつ」

そう、噂の幼馴染みとは、"みつ"こと石田三成。風紀委員長だ。その事実を知るのは少数しかいない。だから面白い程に皆驚いている。別に隠している訳じゃないんだけど。

「はぁ!?マジかよ!」
「石田殿と音松殿は幼馴染みで御座ったか」

声を上げたのは質問してきた猿飛先輩ではなく、先程から俺の豹変ぶりが気になって仕方ないと顔に書いてあった長曽我部先輩と真田だ。

「つーか石田のこと、みつって呼んでんのかよ」
「だってみっちゃんって呼ぶと怒るから……」
「当たり前だ!そのような貧相な呼び名など許可しない」

昔は俺がみっちゃんと呼んだら嬉しそうに破顔したのにな。あの頃の可愛いみっちゃんはどこいった。いや、まぁ、今もみつは可愛いけど。

「で、普段とキャラ違う訳は?」
「あー、やっぱりそこ気になっちゃいます?」
「むしろそこしか気にならない」
「もうちょっと俺とみつの関係を気にかけてくれてもいいと思います」

上手い具合に話が逸れたかなと思ったんだけど、現実はそんなに甘くない訳で。笑顔の猿飛先輩に問い詰められる。

「いやー、ちょっと人見知り拗らせてコミュ障気味っていうか……」
「「「は?」」」

罰が悪くなり目をそらしながら言えば、その視線の先では先程から一言も発してない参謀様が退屈そうに欠伸をしていた。
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