野良神×排球

□第3章
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陽菜side

「久しぶりー!」


ぎゅうと走ったままの勢いで抱きついてきた人に首を閉められて後ろに思いきり倒れた。


「離れて!ちょ、スクナ!」


もう、大袈裟ですねーとニコニコ笑いながら私の上から退いたスクナに紙緑の手を借りながら立ち上がる。


奇抜なピンク色の髪をツインテールにしたスクナは紙緑より背が低い。
確か150もなかった筈だ。
お久しぶりです!とニコニコ笑うスクナに久しぶりと声をかける。


研磨君と黒尾さんと別れて学校付近をうろうろしていたらスクナが走ってきた。

それで冒頭に至る訳だ。



「陽菜さんすぐお体無理なさりますからねー今触っただけでも数ヶ所ぼろぼろでしたよ。」


「....そっか。スクナ。医薬の神の貴方にお願いがあるんだ。」




少彦名神。
守護分野は医薬、温泉、お酒、穀物。

一寸法師のモデルになった神とも言われる神様で海の向こうからやってきて、大地を象徴する神・大国主神と共に国造りをしたという。

そんなスクナは私の友人であり妹分でもある。



「まあ、そんだけ体がぼろぼろになってきたら大体は察しがつきます。悪い噂もありますし...延命のお話ですか?」



「そう。お願いできる?」


「陽菜さんの言うことなら叶えますよ〜」











「さて、良い噂と悪い噂どっちから聞きたいですか?」



「え?えっと.....陽菜さん?だよね。」



現在宮城に戻っていた。
時刻は夜である。


研磨君達には何も言っていないけど近いうち多分スクナに会いに行ったときにでも会えるから心配はないだろうと思う。


今最も近い神と言うことでこの前合宿のときに出会った神の元へと私は押し掛けていた。
アポなしだ。



「萌々佳さん、どっちから聞きたいですか?」



「いきなり言われても.....」


「神器も連れずに来るなんて随分余裕なんじゃないですか?」


「君みたいな子どもと違うんだよ。私は萌々佳さんに話があってきたの。君にじゃない。」



縁側にすとんと腰をおろしそう言うと怒りに身を任せようとするその子を萌々佳さんが止める。
神器が独断で他神に危害を加えた場合ヤスみが表れてしまうから。だから止めたのかそれとも私なんて萌々佳さん1人で止められると言う挑発か。



「悪い噂から聞かせて下さい。」


「そう?聞いたことあったら悪いんだけど.....荒魂(あらみたま)は知ってるね?」


萌々佳さんは頷いた。


「あらみたま、って何ですか?萌々佳さん」


「風架は知らなかったね。暁教えてあげてくれる?」



「.....はい。」



荒魂。
神様は優しい顔だけではなく裏の顔を持つと言われている。
神様は災いを起こし自然を壊しそれで人を殺すこともあるという。



女の子がチラリと私を見てきた。本当に聞いたことすらない感じか。


だから人々は大昔から神様を崇めてきた。神様どうか怒らないで下さいと


だから社にお供え物したり巫が舞を踊るお祭りとかあるでしょ?と付け加えるともう1人の男の子が口を開いた。



「神が持つ怒りと破壊の魂。ひとたび神が怒れば裏の顔の荒魂が発動し破壊しつくす....」



「まあ人間だって怒れば皆怖くなるでしょ?神様はその怒り方が半端じゃないってこと。」


女の子は神器はなっとくしたのか萌々佳さんにもそういう1面はあるのかとか考え出したのか眉間に皺がよっている。
まあ、神様なら誰でも知っていることだし萌々佳さんの神器で知らないのは彼女だけだったみたいだし心配になるのは当然か。
まあ、私も彼女の事は何も知らないけど。



「あ、それでアマテラス様がこの頃姿を見せないことは知ってる?」

「アマテラス様が.....?いや、知らなかったけど、」



「アマテラス様は太陽の神様ですよね?そのアマテラス様がどうかしたんですか?」




あからさまなため息をついた。


「暁君だっけ。アマテラス様が神様の頂点に立ってるのは知っていた?一番偉い神様が姿を見せないんだよ



「それって…」


「神様の統率がとれなくなって来ている事を意味してる。」



誰かの呟きに答えた。
ここまで言えばここの神らはわかるはずだ。
アマテラス様がいない意味を。


アマテラス様は太陽そのもの。
太陽はこの世界に存在しなくてはならない。


全ての神の上に君臨するアマテラス様だけど過去に一度お怒りのあまり岩の中に閉じ籠った時があった。


その瞬間空にあった太陽も消えてしまい世界は真っ暗になってしまったんだよ。



当然植物は育たず悪しき者達まあ、妖がはびこる始末....。


そこで神々が岩から出そうと知恵を絞り、鏡の神や力の神等が協力しようやく世界に光が戻った。



「何故一番偉いかと言うと太陽はなくてはならない存在だから。」



「まさか、その昔の?」



「アマテラス様が荒魂になっていた場合、もしくは何者かがアマテラス様に危害を加え荒魂になってしまう場合それは世界の終わりを意味している。」




事実かどうかはわからない。
けどこの頃妖が多いのも神様の行方不明が多いのもその第三者が存在し裏にアマテラス様がいるとするなら説明がつく。


世界は存在しなくなってしまう。



「近々神様達の会議がある。それを伝えたかったから来たの。」



良い噂は長くなったからまた今度と言って消えた。
伝える事は伝えた。







物語が動き始めていた。
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