野良神×排球
□第3章
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萌々佳side
「イイなあ〜‥‥」
「何が?」
「ツッキーの身長が欲しいと思ってさあ。少しもらいたいぐらい」
「無理だから」
私はツッキーの家にお邪魔している。家まで、送り社に帰ろうとしたのがツッキーが、
「お茶ぐらい出すからあがっていけば。どうせ、瞬間移動とか非科学的なもので帰るんでしょう」
皮肉的に聞こえるが、それがツッキーなりの優しさだと一緒にいて分かってきた。素直になれないだけなんだよね。本当はすごく優しい人だもんね。
にしても、
「風架、そんな端にいないでこっちにおいで」
「いっいえ!だ、大丈夫です!!」
風架は部屋の隅で小さくなっている。暁と月夜は留守番をさせておいたのだが、風架は行きたいです!と言ったので連れてきたのだ。それなのだが‥‥‥‥。部屋の端で丸まっている。まあ、仕方ないよね。風架は人間の男が苦手だから。今日の勉強会の時も一度も部屋に来なかったもんね‥‥。
すると、ツッキーは立ち上がり
「はい、これ」
ツッキーが風架に渡したものはクッキーだ。風架はさらに縮まってしまったが、さっとクッキーを取り
「あ、ありがとうございます‥‥‥‥」
聞こえるか聞こえないかの声だったが、お礼を言った。
風架も人間の男と話せるんだよ。神器の成長は主からすればとても嬉しいことだ。心が温かくなることを感じながら、フッと部屋にある時計に視線を向ける。
「風架、そろそろ帰ろうか。暁が心配してるといけないから」
「はい」
時間はいい時間を指していた。あまり遅くなると、暁と月夜が心配するため早めに帰らないとね。それに、ツッキーにも迷惑がかかるしね。
それを察したのか、ツッキーは何も言わず外まで送ってくれた。空には星がちらほらと見えている。あ、そういえば。私は疑問に思っていたことをツッキーに聞いてみることにした。
「ねえねえ、ツッキー」
「何?」
「ツッキーの部屋の横の部屋って誰か使ってるの?」
そう、ツッキーの隣の部屋は誰かが使っているまたは使っていたような気がした。それに、なんか妖の匂いもしたしね。すると、ツッキーは何か迷っているようだったが、
「兄の部屋だよ」
「お兄さんの部屋‥‥」
そうだったんだ。てか、
「ツッキーって兄弟いたんだね‥‥」
「まあ、一応ね」
「そっか‥‥。お兄ちゃんか‥‥」
「そうだけど、それが何かしたの?」
「ううん。なんでもない」
私はそう言うと風架を手招きし、
「バイバイ」
ツッキーに手を振り、暁達が待つ社へ帰ったのだった。
月島side
僕は今まで二人がいた場所を見つめていた。
「バイバイか‥‥‥‥」
どうしても、先程の萌々佳の行動が昔と重なる。しかし、それ以上に気になることが‥‥。なんで、兄という言葉を耳にすると悲しそうな顔をするのだろうか。聞いてはいけないよう気がするから聞けない。
そんな事を思いながら、僕は‥‥。
「笑ってて欲しいだよ‥‥‥‥」
この時の僕の気持ちは分からない。ただ、この言葉がフッと頭の中に出てきた。なんで、こんな事‥‥。
この気持ちを知るのはもう少し先になる。
しかし‥‥
それを知った時、僕は萌々佳の秘密を知る事になる。