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□風間さんBirthday!
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「……任務中?」

静かな廊下に立ち尽くし、私は呆然と呟いた。右手に持っている携帯には、風間隊の後輩二人からメッセージが届いている。

『風間さん完全に忘れてますよ、任務はいってます』

『すみません、19時半には戻ります』

「なんてことだ」

せっかく蒼也さんの誕生日をお祝いしに来たのに、まさか任務で出払っているとは。うーんと唸れば、栞ちゃんが隣でにこにこしながら言った。

「いいじゃない、晩ごはんに調度良い時間に帰ってくると思えば」

「あ、そうだね」

とりあえずは二人で先に行っちゃおうかと作戦室の扉を開いた。しゅん、と比較的静かに開いた扉の先、オペレーターの机の前の椅子には歌歩ちゃんが座っていた。私達が入ってきたことに気付くと、風間隊との通信のスイッチを切ってから口を開いた。

「こんにちは。すみません、風間さん忘れてたみたいで」

「大丈夫大丈夫!栞ちゃんと先に準備しとくよ」

「こっちは私たちに任せといていいから、オペレーターやっててね」

「はい、お願いします」

こくりと頷いた歌歩ちゃんがモニターに向き直る。蒼也さんたちが戻ってくるまで約2時間。

「よし!では!」

「やっちゃいましょー!」

それまでに隊室の飾りつけとかをしちゃおうと、栞ちゃんと顔を見合わせて頷いた。





19時になったころ、二人で薄い色紙で花を作っていた時に、ピンポーンと音量が落とされたチャイムの音が鳴った。その音にぱっと顔を上げたのは栞ちゃんだ。

「レイジさんかな」

そう零した栞ちゃんが扉へ足早に向かって行く。扉を開けた先に居たのは栞ちゃんの言った通り、レイジさんだった。

「レイジさん、待ってましたよー」

「邪魔するぞ」

「レイジさんこんにちはー」

「こんにちは」

大きな鍋と袋を持ったレイジさんが作戦室の中へ入ってくる。簡易キッチンへ鍋を置きに行ったレイジさんの後ろに、良い香りが漂った。

「カレー?」

「そう、レイジさんの特製カレー!風間さんのお気に入りだからお願いしたんだ」

「おー!」

それは楽しみだね、と歌歩ちゃんと笑う。なんとレイジさんはカレーに乗せるカツまで揚げて行ってくれるらしく、てきぱきと準備を始めた。





「じゃあ宇佐美、9時には迎えに来る」

「はーい。ありがとねレイジさん」

「ああ。蒼たちも、たまには玉狛に来ると良い」

「今度歌歩ちゃんと一緒に行きますね」

「ありがとうございました」

これまた良い香りをさせたカツを揚げ終わったレイジさんは、軽く手を振って作戦室を後にした。この後に任務が入っているらしい。

「もうすぐ風間さん達が戻ってきますし、クラッカーの準備をしておきましょうか!」

「そうだね!」

「きくっちーに帰ってくるときに連絡してくれるように言ったから、扉の前で待ってよう」

「おー!」

女子組三人で作り上げたケーキも冷蔵庫に用意して、レイジさんが手伝ってくれたご飯の用意もばっちり。飲み物も冷えてる。今はいない菊地原くんと歌川くんの分を含め、プレゼントも用意した。

『もうすぐ着きます』

「お、連絡きたよー」

菊地原くんの連絡を受けてこれまた用意しておいたクラッカーを手に取り、こぼれる笑みをそのままに三人で扉の前に向かう。

「三上、戻っ…」

「「「ハッピーバースデー!」」」

しゅん、と開いた扉のさき、戻ってきた蒼也さんが歌歩ちゃんに声を掛けようとしたとき、ぱんぱんぱーん!と軽やかな音を立てたクラッカーから色とりどりのテープが飛び出し、蒼也さんの頭の上に降り注いだ。

「なんだ…?」

「今日は風間さんの誕生日でしょう。おめでとうございます」

「誕生日おめでとうございます」

「……そうか、忘れていた。ありがとう」

本当に自分の誕生日を忘れていたらしいテープまみれの蒼也さんが、ゆっくりと瞬きをしてから表情を緩めた。

「ご飯の準備出来てますよー」

「ほら風間さん、座って座って!」

「これもかぶって下さいね」

じゃーん、とクロスの敷かれたテーブルの上に用意したカツカレーを見せれば、蒼也さんの瞳が輝いた。栞ちゃんに手を引かれるまま椅子に座り込んだ蒼也さんに、歌歩ちゃんが蒼也さんの頭に『今日の主役!』と可愛らしいポップで書かれた王冠をかぶせる。

「風間さん、これ僕からです」

「ありがとう」

「これはオレからです」

「ああ、ありがとう」

菊地原くんと歌川くんがプレゼントを渡し、蒼也さんが嬉しそうに微笑む。人数分の飲み物を用意して、換装を解いた蒼也さんたちの前に置いていく。

「蒼也さん、誕生日おめでとうございます」

「ありがとう蒼」

「これは私から」

「ああ、三上ありがとう」

「これは私から!」

「ありがとう宇佐美」

プレゼントを渡しきると、蒼也さんの前には贈り物の山が出来上がった。薄く笑っている蒼也さんを囲むように座って、栞ちゃんがすうっと息を吸って声を上げた。

「さ、風間さんの誕生日を祝う会を始めたいと思います!」

「各自グラスを持ちましょう!」

「それではー!」

『風間さん誕生日おめでとうございます!』

「ありがとう」

かしゃん、とグラスを合わせて風間さんの誕生日会が始まった。


風間さんHappy Birthday!!
2015/9/24

(来年は忘れないで下さいねー)
(ああ)







風間さん誕生日おめでとう!
間に合ったぞおお!

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