WT

□出水くんBirthday!
1ページ/1ページ



「あ、いたいた」

本部内ランク戦ロビー。
椅子に座って一つのモニターをじっと見ている弟子の姿を見つけて、そちらへ向かって行く。

「いーずみくん」

「はい?あ、蒼さん」

モニターに集中していた出水くんに声を掛ければ、私の声に反応してぱっと振り向いた。ちらりと見たモニターには米屋くんが映っている。どうやら緑川くんと対戦しているようだ。

「お暇?模擬戦しよ」

「お、いいっすよ!やりましょ!」

ちょうど暇だったんですよ、とにこにこしながら立ち上がった出水くんに笑みをこぼしながら、二人でブースへと向かう。

「じゃ、おれここに入りますね」

「おっけ。すぐ申し込むから待ってて」

先にブースに入った出水くんと別れ、空いているブースへ入る。モニターの前まで進み、出水くんが居るブースの番号を探す。
設定はスタンダードに市街地、昼、天候は晴れ。

「よしよし、いくか!」

携帯を仕舞い、隠しきれない笑みを浮かべながら出水くんへ対戦申込みボタンを押した。





「さて、何処から来るかな」

この辺で一番高いビルの屋上に立ち、バッグワームを解除する。出水くんなら、私の攻撃を警戒しつつも射程圏内まで見つからない様に近づいてくるはずだ。

「私はここだぞー」

小さく私が零した時、背後、正確にはビルの真下から弾丸が飛んできた。いったん私を通り越して、放物線を描いて落ちてくるのは。

「ハウンドか」

これは私の視線を上に向けるためのやつかな、と思いながら同じようにハウンドを生成、相殺させる。
ちらっと見たレーダーには、まだ出水くんの姿は映っていない。

「ここまでこないかなあ」

一つしかない階段だと、反撃を警戒して屋上まで登ってこないかもしれない。まあ、根気良く待つしかないけれどと思い直した時、屋上へ繋がる扉が勢いよく開いて細かい弾丸が飛び出してきた。

「わ」

出水くん、登ってきてくれたかな。屋上を隙間なく浚うような弾にシールドを出して凌いでいると、開かれた扉の陰に人影が見えた。

「蒼さん、なんで攻撃してこないんです?」

「何でだと思う?」

続いて反響気味に聞こえてくる出水くんの声。もう弾は飛んでこないし、シールドを消して屋上の縁まで歩く。

「…おれを待ってた?」

「正解」

縁ぎりぎりで振り向いた私の先には、扉から身体を出した出水くんの姿が見えた。
周囲を見渡しても罠も見当たらないから出てきたのかな。

「なんか話でもあるんですか?」

「あるある。出水くん、誕生日おめでとう」

「へ?あ、ありがとうございます」

そう、今日は出水くんの誕生日なのだ。しかしこのタイミングで祝われると思っていなかったらしい出水くんは、半分きょとんとしている。

「なんでこのタイミングで?」

「それは、これを見せたかったからね。…アステロイド」

私の周りにぶわりと出現させたアステロイドに出水くんが警戒する素振りを見せたが、それも一瞬で笑顔になった。

「ちょ…!すっげ、なんだそれ!」

「冬島さんに頼んでちょろっと」

「冬島さんすげえ!」

そう、出水くんが笑顔になったのは私が出したアステロイドに原因がある。このステージで私が出すアステロイドは、全て白く発光する普通のトリオンキューブに赤や緑、青といったリボンで装飾が施されているプレゼント仕様になっているのだ。

「ということで」

「はい」

「くらうがいい」

「えっ!?」

「出水くん誕生日おめでとう攻撃!」

びゅわっとプレゼントたちを不用意に近づいてきた出水くんに撃ち込む。泡を食った出水くんがシールドを張るまもなく、プレゼント攻撃を一身に受けて緊急脱出した。
ドンッと響く音と尾を引いて緊急脱出していく出水くんを見送り、満足して一人頷いた。





ブースの椅子に座ったまま冬島さんに大成功でしたと連絡を入れていれば、外からばたばたと足音が聞こえてきた。

「ちょっと蒼さん!」

「出水くん戦ってくれてありがと。これが本物のプレゼント。あとこれハウスみかん。緑のみかんは好き?」

「好きっす!ありがとうございます」

ありゃ酷いっすよ!と駆け込んできた出水くんに、携帯をしまう代わりに用意しておいたプレゼントと緑色をしたハウスみかんを差し出す。
それを嬉しそうに受け取った出水くんが、はっとした顔で「いやそうじゃなくて!」と突っ込む。

「凄かったでしょ、プレゼント攻撃」

「すごかったっすけど、普通にアステロイドでしたね…」

「アステロイドだからね」

いくらプレゼントみたいな装飾がされているとはいえ、もとはただのアステロイドなのだ。攻撃を受ければドカンだ。

「もっかいやる?」

「望むところっすよ、今度は負けませんからね」

さっきのブースに入りますから!とプレゼントを抱えて去っていく出水くん。アステロイドの仕様は冬島さんに頼まないと戻せないから、出水くんが満足するまでプレゼント攻撃をしてやろうと笑みをこぼした。
私が出水くんと対戦しているこの間に、太刀川隊の作戦室ではプレゼントとお祝いする隊員達が集まっているのを、出水くんは知らない。
生まれてきてくれてありがとう、今日はたくさん祝われてくれ!



出水くんHappy Birthday!!
2015/9/21

(ハッピーバースデー!)




出水くん、一日遅れでごめんね…!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ