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□夜の防衛任務
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「お待たせ!」

「お、早かったっすね蒼さん」

ボーダー本部、正面入り口前。
建物の中からばたばたと走ってきた蒼は、入口横にいた出水に駆け寄った。

「ごめんね、いきなり呼ばれるからちょっと準備に時間掛かっちゃった」

「いや、こっちこそ非番なのに悪いっすね。なんか太刀川さんが酷い風邪ひいて、緊急で蒼さん呼んだみたいで」

「あー、それで…慶も風邪ひくんだ」

「言っちゃ悪いけど意外っすよねー」

「ねー。よし、行こっか」

「はい」

二人並んで、防衛任務の所定地に向かって歩き出す。
今日の防衛任務はぎりぎり警戒区域の住宅街。
そこに近界民が現れる事を悠一が予知していたので、それの迎撃に向かう手筈になっている。

「今日来る予定の敵さん、多いんだって?」

「あー、そこそこ来るらしいっすよ。おれらの他にも風間隊が呼ばれてましたし」

「蒼也さんたちはちょい東だよね」

「そっす」

私と出水くんが配置されるのは西方面なので、真逆には風間隊が配置についている。他の任務に回っている当真くんと奈良坂くんのスナイパー組も、手が空き次第こちらの援護に来るようだ。
悠一の予知では数多くの近界民が現れるらしいので、幾つかのチームに分かれての防衛になる。
市街地の近くなので、警戒区域から出さないよう厳重な警備になっている。
ちなみに悠一も何処かで戦況を見て、手近な所から削っていくらしい。

「慶は残念がってるだろうねえ」

「でしょうねえ」

「だけどそのお蔭で私に任務が回ってきたし、良いか。あとでお見舞い行って土産話聞かせてやろう」

強い敵と会える機会なのに、自宅療養とは可哀想に。
いくらトリオン体になれば平気とは言え、風邪をひいてることには変わらないのだ。無理をして後で倒れられても困る。

「あ、おれも行きます。太刀川さんのお見舞い」

「じゃあ二人で行こうか。どうせご飯食べてないだろうし、ゼリーとか食べられそうなの買っていこう」

「ですね、了解」

任務の後に慶のお見舞いの予定を入れ、二人で夕闇に染まりつつある街並みを歩く。

「ん、と…この辺だっけ。屋根に登っておこうか」

「そうっすね」

配置場所に着き、敵の発見を容易にする為に手近な屋根へ登ると、丁度通信機から蒼也さんの声が聞こえてきた。それに合わせてこちらも連絡を入れる。

『風間隊、配置に付きました』

「七草と出水、此方も配置に付きました」

『ああ、確認した。くれぐれも警戒区域外に出すなよ。気を付けて臨んでくれ』

『「了解」』

配置に付いた事を連絡し、通信が切れて静寂が戻る。
横を見れば出水くんがすぐ横で座り込んでいたので、同じように屋根に座り込む。

「もうちょい待機だねー」

「ですねー。あ、蒼さん、お見舞いの帰りに一緒に飯食いに行きませんか」

「お、いいね。何食べたい?」

「蒼さんが良ければエビフライが食いたいっす」

「好きだねエビフライ。いいよ、この前美味しそうな洋食屋さん見つけたからそこ行こうか」

「まじっすか!行きましょう!」

お見舞いの後に食事の予定も入れ、二人で話し込んでいるとふいにバチッと空気が爆ぜる音が響いた。
瞬時に二人で目を合わせ、立ち上がる。

「来たね」

「ええ、…こっちは5体ですね」

二人で周囲を確認し、すぐ近くに出現した門から5体のネイバーが出てきたのを視認する。

「…忍田さん、こちら七草。ネイバー5体の出現を確認しました。迎撃に入ります」

『ああ、頼んだ』

手早く通信を終え、出水くんとネイバーを見据える。
ネイバーは二手に分かれて市街地へと向かおうとしている。

「出水くん、右の2体いける?」

「蒼さんの弟子っすよ?いけるに決まってます」

「さっすが、頼もしいね。よし、さっさと片付けて次行こう」

「了解」

「「アステロイド」」

こちらも二手に分かれてネイバーの進路を妨害するように前へ回り込み、静かに口を開く。
私と出水くんから同時に飛び出した弾丸がネイバーへと降り注ぎ、一帯に弾丸の雨を降らせた。



降り注ぐ雨
出水くんと防衛任務

(殲滅完了、お疲れ様)
(じゃ、次行きましょっか)

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