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□買い物帰り
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「春秋さん、お昼にバーベキューするんですって?」

「…よく知ってるな」

「奥寺君がうきうきで話してるのを聞きました。という事でぜひ私も混ぜて下さい!勿論食事代は払います」

「まあ、構わないが」

東隊の本日のお昼はバーベキューとの情報を聞きつけて突撃し、なんやかんやで春秋さんと買い物に出かけた帰り道。
ビシッ、と空気の割れる音と共に目の前に黒い門が浮かんだ。

「うわあ、目の前」

「蒼、迎撃するぞ」

「はい」

「…本部、こちら東。自分と七草隊員の前にネイバーが出現。迎撃します」

ちょうど目の前に門が開いてバンダーが二匹現れた。
本部に連絡を取りつつ二人で換装し、迫り来るネイバーと交戦を始めたのが30分前。

「うーん…油断した」

道路に座り込んだ私のすぐ横に、アイビスを担いだ春秋さんがブーツの踵を鳴らして立ち止まった。

「余所見してたろう、蒼」

「春秋さん…助かりました」

スナイパーの春秋さんとシューターの自分だったら、春秋さんを遠くに逃がしつつネイバーを迎撃する態勢になる。
春秋さんを援護しながらバンダーを倒していると、後ろから突如現れたモールモッドに奇襲を受けた。攻撃の直撃は避けたものの、左足の膝から下が切り落とされたのだ。
無論目の前のネイバーは削り倒し、私に不意打ちを食らわせたネイバーは後ろにいた春秋さんによって倒されたが。

「気をつけろよ」

「すみません」

春秋さんは注意を促し、本部に殲滅の連絡を入れる。
その足元に座る私はトリガーを解除し、実体へと戻る。無くなった足が元へ戻った。

「蒼、ほら」

「あ、ありがとうございます」

「小荒井達が待ちくたびれているだろう、早く帰ろう」

「はい」

同じく実体へ戻った春秋さんに手を引かれて立ち上がる。
換装する前に放棄された住宅の陰に置いた食材たちを回収し、本部へ向かって歩き出したのが20分前。

「…春秋さん」

「なんだ」

「今日、変にツいてますよこれ」

「奇遇だな、俺も同じ事を思った」

ビシ、と再び開いた門は、やはり目の前50mほど先。
これまた同じく私が日陰に食材たちを隠している間に春秋さんが本部へ連絡を入れる。

「…忍田さん、こちら東。再び自分たちの前にネイバーが出現。七草隊員と迎撃します」

『ああ。何度もすまないが、気を付けて対処してくれ』

「了解」

通信を終えた春秋さんの元へ走り寄り、門から飛び出すモールモッドを見据えて換装した春秋さんに続き、自分も換装する。

「トリガー起動」

「あ、蒼お前足が、」

「うわあそうでしたー!」

換装と同時に左足が先程切り落とされたままの状態へ戻り、それに伴ってバランスを崩してずしゃあと地面に倒れ込んだ。

「蒼、手を」

「あ、はい!」

伸ばしてくる春秋さんの手を掴めば、ぐいっと引かれて抱えられる。抱えられる!?あれっお姫様だっこ!?

「春秋さんこの状態は一体!」

「この方が動きやすいだろう。俺が移動するから、蒼が迎撃しろ」

「ああ確かに!了解!」

春秋さんに抱えられて移動しつつ、アステロイドとバイパーを生成してモールモッドへ撃ち込む。
アステロイドで動きを止めた所で、後続のバイパーが弱点の目を砕いた。他のネイバーの姿は見えない。出てきたのはこの一体のみの様だ。

「お疲れ様」

「春秋さん、助かりました…」

ゆっくりと降ろされ、換装を解く。
春秋さんも換装を解いて、再び本部へ連絡を入れたのが15分前。

「…春秋さん、宝くじ買いに行きませんか」

「ああ、そうするか。当たりそうだ」

「当たったら二人で山分けしましょう」

「そうしよう」

そして今、基地ももうすぐと言う所で三度目の門が目の前に出現していた。
出てきたのは最初に来たのと同じくバンダー2体。

「蒼、対処出来るな」

「はい」

手早く連絡を入れた春秋さんが換装し、私の元へやってくる。頷いて換装し、ぐらつく前に再び抱え上げられる。
春秋さんがネイバーの攻撃を避ける傍ら、アステロイドを生成してネイバーへ叩き込んだ。

「お見事」

「ありがとうございます。…流石にもう来ないですよね」

「だと良いな」

換装を解き、手早く荷物を回収する。
気付けば予定していた時刻が大幅に過ぎていた。

「うわ、大変。春秋さん、早く戻りましょ」

「ああ。…なあ、蒼」

「なんでしょう」

「バーベキュー終わったら、本当に宝くじ買いに行くか」

「そうしましょう。これで往路にネイバー出たら当たり確実ですね」

「だな」

二人で軽口を叩きながら荷物を分けて持ち、次が出ない内にと足早に本部へと向かっていった。
皆でバーベキューしたら、また二人で出掛けよう。



東さんとの買い物帰り
BBQまでの長い道のり

(春秋さん、あれ見られてました…!)
(何をだ?)
(いま、廊下で姫って呼ばれたんですよ私…)
(さっき諏訪に王子って呼ばれたのはそれか…)

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