プライド

□愛しきくせっ毛
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私の引退は、新聞でもニュースでも大々的に報道された。もちろん、道内ニュースだけではなく全国ニュースでも。(女子プロ野球もあるが)女性選手で初めてのプロ野球選手だったからだろう。監督も、公式戦の本当に最後の方で引退試合とセレモニーをやってくれると言う。石井さんも引退をするから、その前後になるかもしれないらしい。あの時、自分でヒーローインタビューの中で引退宣言をしたが、未だに実感がない。



「はあ……」


「どうしたんそんなでっかい溜息ついて」


「翔さん、」


「珍しいな、普段そんな顔しないやろ」


「……いや、何かふわふわしてて」


「体調悪いんか?救護室行く?」


「そうじゃなくって!……自分で引退宣言したのに、こうニュースでめっちゃ取り上げられてて変な感じしとるだけです」


「……あー、めっちゃ取り上げられてるもんな」



プロ野球に指名された時も。初めて投げた時も。最初の頃はヤジも酷かった。ただ、結果を残していくとみんな手のひらを返して応援してくれた。その分、結果を残せなかったらどうしよう、という不安もあった。最初の頃から純粋に応援してくれてた人の声はありがたかった。今では、私の名前がコールされると歓声が響くようになった。それが嬉しかったのだ。自分で決めたのに、どこか実感がなかった。



「自分で決めたのに、どこか心の整理がついてないんです。明日も練習するぞ、オフの自主練どうしようかなあ、とか色々考えちゃって。でも、身体がついてこなくって」


「守里が決めた道ならそれでええんちゃう?俺は間違っとらんと思う」


「……翔さん」


「俺は守里がどんな選択しても応援する」


「ありがとうございます、……すごい味方だ」





愛しきくせっ毛

20190324


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